体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「あし(足・脚)」です。
「あし」はどこにある?
あなたの「あし」は体のどこにありますか? さわってみましょう。
そうですね、お腹とお尻の下から伸びる長くて立派な2本が「あし」ですね。
「あし」は2本あるから、立ったり、歩いたり、飛んだり、走ったり、階段を上ったり、それから蹴ったり踏ん張ったりできる。移動のときは特に大活躍します。
もしも「あし」がなければ今いったはたらきができなくなるから、本当に不便です。
「あし」は、「足」または「脚」と書くけれど、正しくはこの2つは異なる場所を指します。「足」は足首より先を、「脚」は正しくは「下肢
」といって「あし」全体(お腹から下すべて)を指します。ただし、一般に下肢のことを「足」と書いたり呼んだりすることがあります。
脚のしくみ
では、最初に「膝」を確認しましょう。そうですね、こけるとよくすりむくところです。膝から上は、足の中で一番大きくて長い部分で「太もも」といいますが、正しくはここを「大腿」といいます。ここには人間の体の中で一番太く長い骨、「大腿骨」があります。
膝から下は、前方を「向こうずね」、後方を「ふくらはぎ」といって、まとめて「下腿」といいます。ここは2本の骨があります。向こうずねを触ると骨がありますね。この骨は「脛骨」といいます。脛骨の前は触るとわかるように、筋肉がなく、うすい皮膚があるだけです。
もしもここに硬いものがぶつかると、ものすごく痛い! 昔々、戦にめっぽう強い弁慶さんという方がいました。でも、さすがの弁慶さんもここだけは弱点だったといいます。このことから、この部分を“弁慶の泣き所”と呼びます。あなたも気を付けてね。今度は下腿の外側をさわりながら手を下のほうにずらしてください。骨がぼこっと出ているのがわかりますか? 自転車でこけるとケガしやすいところ。ここは「外くるぶし」というのだけど、この骨は、脛骨とならんで膝まで達して、「腓骨」とよばれています。
つまり、大腿には大腿骨1本、下腿には脛骨・腓骨あわせて2本の骨があるのですね。
足のしくみ
では次に足をみてみましょう。足の裏と足の甲があります。むずかしい言葉だけど、足の裏は「足底」、足の甲は「足背」といいます。手のひらの中にあったのと同じように、ここにも5本の細長い骨、「中足骨」があります。足の指は手と同じ5本ですね。
「手」のお話のときに、手首あたりに「手根骨」というのがありました。足にも同じような名前の骨、「足根骨」という7個の骨があります。足根骨はさすが足の骨というだけあって、手とはくらべものにならないくらい大きな骨です。足の後ろがわ、つまり踵をさわってごらん。硬くて大きな骨がありますね。これは踵骨
といって、足根骨の一つです。とても大きくて立派ですね。
ちなみに踵は、走ったり歩いたりするときに大活躍するアキレス腱という太くて丈夫な腱がくっつく場所です。アキレス腱もさわってみましょう。ときどきスポーツ選手がアキレス腱を切ってしまいます。とっても痛いでしょう。もしアキレス腱を何かの拍子で切ってしまうと、つま先立ちができなくなります。
足首が変な方向にぐねると…
次は足首を動かしてみましょう。いかがですか?
足首の動きは、本来、曲げる・伸ばす、そして少しばかり左と右に動く程度です。ところが、スポーツをしていると、ときに足首に強い力がかかり、変な方向にぐねってしまうことがあります。これもとても痛い!
ぐねり方が特にひどいことを「過伸展」といって、それによって痛めた状態を「捻挫」といいます。体を動かすことはとてもいいことですが、足首の捻挫には十分気をつけましょう。
足の指は器用でない
さて、足の指の骨の数は手と同じで親指が2個、それ以外の指が3個で合計14個です(小指が2個の骨の方も特に日本人で多くいらっしゃいますが)。
しかし、手と違ってすべての足の指はまっすぐ生えています。だから、人間の足の指は手の指とちがって対向(第18話「手」参照
)ができません。それに比べて、サルの足は対向に近い動きができるものがいて、木登りや足の指をつかった道具の使用がとても上手です。つまり、足の器用さでいえば、人はサルに負けてしまいますね。
人間にある足のすぐれた構造
そのかわり、人間の足には別のすぐれた構造があります。足底の真ん中に「土踏まず」という場所があります。小さな子はまだはっきりと確認できないけれど、体が成長していくとあらわれてきます。
足をべったり地面につけても土踏まずは地面に触れることができず、横から見るとそこが少しもり上がったように見えます。これは、上向きにカーブをえがいた橋(アーチ)のような形であることから、「足のアーチ」といいます。走ったり、歩いたり、跳ねたりすると、人間の体の全体重が足にかかりますが、足のアーチがバネのようにクッションとなって体重を支えてくれます。このおかげで、人はとても長い距離を歩くこともできるのです。すごいでしょ!
膝の骨の役割
それでは、もう一度膝を触ってみましょう。
ここに丸く大きな骨があることに気づくと思います。 そう、よく「おさら」って呼ばれる骨。この骨は「膝蓋骨」といいます。この骨のおかげで大腿と下腿の曲がる方向が限定されます。つまり、足をピンと伸ばした状態から膝を曲げると曲がる方向はいつもお尻側でしょ? お腹側に曲がらない、もし曲がったらちょっと怖い。そう、膝蓋骨が膝をお尻側にだけ曲がるように、制限してくれているのですね。
大きく発達している脚の筋肉
脚(下肢)の筋肉は、体の他の部分の筋肉と比べるととても大きく発達しています。大腿の前を触ってごらん。この大きな筋肉は「大腿四頭筋」といって、膝を伸ばす運動を行います。
そして大腿の後ろ側には3つの大きな筋肉、「半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋」まとめて「ハムストリングス」という筋肉が膝を曲げる運動をします。
下腿にいけば、脛骨と平行する筋肉の「前脛骨筋」、後ろ側のふくらはぎには「ヒラメ筋と腓腹筋」という筋があります。ヒラメ筋と腓腹筋の下は「アキレス腱」となって踵にくっつきます。これらの立派な筋肉があなたの体重を支え、飛んだり跳ねたり走ったり歩いたりなどの動きを行うのです。
座るときに注意すること
さて、あなたは普段、“座り方”って気にしていますか? 座るという行為は足(下肢)を休ませる姿勢をとることですが、だからといって足を完全に自由にしていいわけではありません。足(下肢)をどのような形で納めるかによって座り方が決まります。
座り方は「お行儀」といって礼儀作法の一つですから、たくさんの人が集まる行事のときは特に注意しましょう。もちろん足(下肢)以外のお行儀も大事だけど、足は体の中で一番長い部分だから、どうしても目立つのです。
まとめ
いかがでしたか? 「あし」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか?
くれぐれも脚で、お友だちや物を蹴ったり壊したりしてはダメですよ。もしもあなたの周りで脚の不自由な方がいらしたら、あなたの手をそっと差し伸べて助けてあげましょう。
大切にしましょうね、あなたの「あし」。
文
(イラスト/齊藤恵)
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