体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「下っ腹」です。
下っ腹はどこにある?
あなたの下っ腹、つまり下腹部は体のどこにありますか? さわってみましょう。
下っ腹はお腹の下、ちょうどお臍がある高さから下の逆三角形の部分です。
下腹部の下には、男の子にだけついているものがありますね。そう。「おちんちん」。これは男の子にはあるけれど、女の子にはありません。不思議ですね、どうしてこんなに男子と女子でちがいがあるのでしょう。
男の子がおしっこを出すところ
それではまず、男の子の下っ腹から。
男の子には「おちんちん」、正確には「陰茎」があります。これは何のためについているのでしょうか。そう、おしっこをするためですね。
「肝臓と腎臓」のお話で出てきた腎臓の役割って何だったかな? そう。おしっこをつくる場所だったね。腎臓はおしっこをつくって、そのおしっこをいったん下っ腹の中にある「膀胱」という袋の中にためておきます。そしてある程度おしっこがたまると、おしっこがしたくなる感覚(「尿意」)が生じます。そうしたら、男子はトイレにいっておちんちんからおしっこを出します。
おちんちんがあると、おしっこを出す方向を自由自在に変えられるからとても便利です。でも、ぶんぶん振り回したらお行儀がわるいしトイレの便器の周りにおしっこが飛
び散
ってしまうからやめておこうね。お掃除するのも大変だから。洋式トイレでおしっこするときは、男の子も座ってしましょう。
ところで男の子ならわかる、なぜだか朝になるとおちんちんがピーンと硬くなることがあります。これは「朝立ち」といって、特に朝おしっこがたまったときになる現象です。ちょっと恥ずかしいけれど、あのようになることは健康な証拠です。でも、ピーンとなっていると、おしっこするときちょっと苦労するのだけどね。
命のリレーを担う大切な臓器(男の子編)
それからおちんちんはもう一つ、大切な役割があります。
男の子の体は、成長していくとやがて体の中で「精細胞(精子)」っていう超大切な細胞がつくられるようになります。精細胞は、おちんちんのつけ根にある2つの楕円形の構造をした玉の中でつくられます。この玉は、正確には「睾丸」とか「精巣」といいます。
「ガーン!!」と、この玉にたまたま球があたると、ってダジャレを言うひまもなく、ものすごく痛い! もう息ができないほど痛い。その理由は、精細胞というのは、あなたの子供ができるために必要な細胞であること。もっともっと壮大な視点でいえば、地球上に人類という生物を存続させるためには男の人の精細胞が必ずいることから、精細胞をつくる体の場所、つまり精巣を守るための防御本能が備わっているからです。だから、ここを守るための反応として、ちょっとした刺激でも強烈な痛みを感じるってわけですね。
女の子のがおしっこを出すところ
それでは次に、女の子の体を見ていきましょう。
女の子には、おちんちんがありません。でも、おちんちんの役割のうち「おしっこを出す」役割の部分はちゃんとあります。ただ、男の子ようにホースのようになっていなくて、ちょっと膨らんだ孔のような構造になっているから、男の子のようにおしっこを出す方向を自由に変えることはできないし、どうしてもおしっこが出る孔のまわりはぬれてしまう。だから、おしっこのあとは紙できれいにふく必要があるわけです。
命のリレーを担う大切な臓器(女の子編)
そして女の子の下っ腹には、男の子にはないもう一つの孔があります。さっきのおしっこが出る孔より少しお尻側。つまり、おしっこの出る孔と肛門の間にある孔。ここを「腟口」といいます。
腟口は子供のときはまだわからないくらい小さな孔だけど、実はここはとても大切な孔です。腟口の中をずっと奥にいくと、「子宮」という袋があって、さらに奥にいくと「卵巣」という場所があります。子宮はお腹の中の赤ちゃんが育つ場所、卵巣は男の子でいう精巣と同じ臓器で、「卵細胞(卵子)」をつくっている場所。この卵細胞も、あなたの子供ができるために必要な超大切な細胞なのです。
つまり、“女の人は卵巣で卵細胞”が、“男の人は精巣で精細胞”がつくられるってわけです。
女の子の二次性徴
ちなみに女の子の場合はおよそ9~13歳くらいになると、二次性徴といって“子供の体”から“大人の体”へと変化(成長)してきます。そしてこの時期に、卵巣の中でつくられた卵細胞が「排卵」といって卵巣から出て、子宮の中に入っていきます。
卵細胞は精細胞をじっと待ちつづけます。でも、卵細胞の子宮の中での寿命は約24時間。もしこの間に精細胞がこなければ、卵細胞はついに子宮の中の一部とともに流れて出ていきます。このとき、多少の出血(血が出ること)を伴います。これが生まれて初めて起こった場合を「初潮」と呼びます。昔から、女の子にとって初潮とは“おめでたい日”ということで、お赤飯を炊いてお祝いしたりしていました。
赤ちゃんが産まれるところ
話を戻して、腟口の大切なはたらきをもう一つ紹介します。実は、お腹の中で育った赤ちゃんは、生まれるとき、この腟口から出てきます。お腹の中の赤ちゃんは、子宮を出て産道というところを通り、そしてこの腟口から出てくるのですね。ちょっとビックリだね。
このように女の子の下っ腹にはとても大切な孔が2個、お尻にある肛門とあわせると3個の孔があるということになります。
うんちをした後のお尻のふき方
ここで一つ気を付けてほしいことをお話しします。
女の子も男の子も、ウンチした後、お尻の孔を紙でふくけれど、女の子の場合はとくに正しいふき方を覚えておいてほしいのです。ふく向きが正しいのは、「肛門から前向きにふく」、それとも、「肛門から後ろ向きにふく」、さあどっちが正しいかな?
正解は、「肛門から後ろ向きにふく」、これが正しい。なぜだかわかるかな? ウンチのところで習ったけど、ウンチにはたくさんの腸内細菌が含まれていました。すると、もし肛門から前方向にふいたならば、肛門は腟口とおしっこの出る孔の近くにあるから、肛門についてる腸内細菌が腟口やおしっこの出る孔について、菌が孔の中に入ってしまうかもしれない。腸内細菌というのは大腸の中にいるときは良い菌だけど、おしっこの通り道や腟口の奥に入ったとたんに悪い菌になって、「感染症」というばい菌たちがあばれまわる病気になるかもしれません。これはとても危険です。
だから、ウンチは肛門から後ろ向きにふこう。ちなみに男の子はおちんちんがあるからそのような心配はほとんどありません。
まとめ
今日のお話をまとめると、男の子の下っ腹にはおちんちんがあって、おしっこと精細胞が通る場所になる。女の子には2個孔があって、一つはおしっこが、もう一つは赤ちゃんが生まれるときの通り道になっている。女の子の場合は、ウンチした後は後ろ向きにふくことが大切。
いかがでしたか? 「下っ腹」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか? 女の子はとくに、ここは赤ちゃんがでるための大切な場所だから、いつも清潔にしておこうね。
文
(イラスト/齊藤恵)
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