人間の健康長寿に役立てられるか⁉ ハダカデバネズミが長生きの秘密を探る

 高齢化社会
こうれいかしゃかい
となった日本では、年老
としお
いても元気でいられるための医療技術
いりょうぎじゅつ
が求められています。そこで熊本大学
くまもとだいがく
慶應義塾大学
けいおうぎじゅくだいがく
の研究グループは、アフリカ北東部に生息するハダカデバネズミに注目しました。

アフリカ北東部の地下に生息するハダカデバネズミ。体長は約10cmで、大きさはマウスとほぼ同じながらマウスよりも長生きする。(画像提供/熊本大学 老化健康長寿学講座)

 ハダカデバネズミは齧歯類
げっしるい
の中で長生きであることが知られており、同じくらいの大きさのマウスの寿命
じゅみょう
が3年程度であるのに対して、ハダカデバネズミは最長37年も生きたという記録があるほどです。人間では年齢
ねんれい
を重ねるとともに発症
はっしょう
する確率
かくりつ
が高まるがんになりにくいこともわかっており、ハダカデバネズミが老化
ろうか
しにくく、がんになりにくい秘密
ひみつ
が明らかになれば、人間の健康長寿
けんこうちょうじゅ
に役立てられるかもしれません。

 しかし、これまでハダカデバネズミが長生きである秘密の研究はほとんど行われてきませんでした。熊本大学と慶應義塾大学の研究グループは、ハダカデバネズミの
のう
から神経
しんけい

もと
といえる神経幹細胞
しんけいかんさいぼう
採取
さいしゅ
。さらに培養
ばいよう
することに世界で初めて成功し、マウスのものと比較
ひかく
する研究を行いました。

ハダカデバネズミの神経幹細胞。左が、浮遊培養
ふゆうばいよう
されたもの、右が接着培養
せっちゃくばいよう
されたもの。(画像提供/熊本大学 老化健康長寿学講座)

 その結果、ハダカデバネズミの神経幹細胞はマウスに比べて増殖
ぞうしょく

おそ
いことが明らかになりました。また、がんの原因になる遺伝子
いでんし
損傷
そんしょう
を起こすように放射線
ほうしゃせん
照射
しょうしゃ
する実験を行ったところ、ハダカデバネズミの遺伝子は
きず
つきにくいこともわかりました。今後、遺伝子が傷つきにくい秘密の解明
かいめい
が進めば、人間ががんになるのを予防するのに役立てられるかもしれません。

 

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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