発電所
から電気を届けるのに欠かせない送電線
。しかし、大きな鉄塔
が数多く建設
されるため、送電線によって自然が破壊
されているようにも感じられます。
その一方で、送電線の下に生えた木が成長して電線に触
れると事故になりかねないため、定期的に木の伐採
が行われており、送電線下は草原が保たれています。日本では古くから、野焼
きや、燃料
にするための樹木
の伐採が行われることで草原が保たれ、草原を好む生物の生活の場が守られてきました。ですから、送電線のおかげで、生物にとって住みやすい環境
が保たれている可能性も考えられます。
そこで東京農工
大学、東京大学、オーストラリアのクイーンズランド大学の共同研究
グループは、チョウに注目して送電線の影響
を調べました。チョウの生息地
として適
しているかどうかを正確
に評価
するため、送電線下だけでなく、材木
を生産
するための植林
が行われた人工林
と、人工林の中を走る林道で調査を実施
。人工林については、若い小さな木の林(幼齢
の人工林)と、大きく育った木の林(壮齢
の人工林)を区別し、あわせて4つの環境で調査を行いました(下写真)。
一口にチョウといっても、好む環境には違いがあります。そこで、草原を主な生息場所とするチョウ(草地性種
)、人里
周辺を生息場所とするチョウ(荒地性種
)、森林を主な生息場所とするチョウ(森林性種
)に分けて、種類数や個体数を調べました。
その結果、草地性種と荒地性種のチョウは種類数、個体数ともに、送電線下、幼齢の人工林、林道、壮齢の人工林の順に多いことがわかり、また森林性種のチョウでも送電線下と幼齢の人工林で多く確認されました。
チョウの幼虫が食べる植物についても調べたところ、送電線下が最も多く生えていました。また、成虫となったチョウが蜜
を吸
う、花を咲かせる植物も多く見られました。調査によって、送電線の下は、すべてのチョウにとって、住みよい楽園ともいえる環境であることが明らかになったのです。
文