人々を笑わせ、そして考えさせてくれるユニークな研究に贈られるイグノーベル賞。今年は「動力学賞
」として、京都工芸繊維大学
の村上久
助教ら4人が受賞しました。これで日本人の受賞は15年連続です。
考えごとをしながら道を歩いていると、他の人にぶつかりそうになることがあります。片方がスッとよければいいのに、なぜ歩行者同士がぶつかることがあるのでしょうか?
村上先生らの研究グループは、その理由を突き止めるためにおもしろい実験を行いました。まず、54人の歩行者をそれぞれ27人ずつ、赤と黄色の帽子をかぶった2つのグループに分け、幅3m、長さ10mの道路を向かい合わせに歩いてもらいます。普通に歩くと、どちらの進む方向にもまっすぐな人の流れができて、スムーズにすれ違うことができました。
次に、片方のグループの先頭の3人にスマホで簡単な足し算をしながら歩いてもらうと、スマホを見ている本人も周りの人も、ぶつかりそうになるのをよけようとして人の流れが乱れ、全体の歩くスピードも遅くなりました。
スマホ操作で注意をそらされた人は、前から来る人に突っ込んだり、ちょっと立ち止まったり、急に向きを変えたりします。そうした動きが周りの人の動きにも影響を与え、歩行者同士がぶつかる原因になっていることがわかったのです。
この研究では、歩行者が一方だけではなく、お互いに動きを予測することで人の流れをスムーズにすることが確かめられました。私たちは普段から無意識のうちに、周りの人の動きを読みながら行動しているのかもしれません。
将来的には、この研究成果が混雑や事故の防止、避難経路の計画づくり、さらにロボット群の行動システムの開発などにも役立つのではないかと期待されています。
文