【ノーベル物理学賞】梶田隆章先生の研究-観測を通じて素粒子ニュートリノに質量があることを発見

2015年物理学賞 梶田隆章
かじたたかあき
先生(東京大学教授
※肩書は受賞当時

 2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士らによって建設されたカミオカンデでは、宇宙から降り注いだ宇宙線が大気中の原子核に衝突して生じる「大気ニュートリノ」の観測が続けられていました。しかし、観測される大気ニュートリノが理論的に予測された数よりも少ないことに梶田隆章博士が気付きました。

 この現象は「ニュートリノ振動」と呼ばれ、1960年代に仮説として提案されていたのですが、ニュートリノ振動が起きているなら、ニュートリノには重さ(質量)があることになります。ただし、ニュートリノなどの素粒子を調べる研究ではニュートリノには質量はないものと考えられていたため、本当にニュートリノ振動が起こっているなら、これまでの素粒子の研究とは矛盾することになります。

 そのため梶田博士らの研究グループは、ニュートリノを検出する性能を大幅に向上させた「スーパーカミオカンデ」で観測を続けました。

スーパーカミオカンデの内部。(写真提供:東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設)

 その結果、本当にニュートリノ振動が起こっていることを確認し、ニュートリノに質量があることを世界で初めて明らかにしました。

 それまでの素粒子科学の常識を覆す大発見だったことから、梶田博士は2015年にノーベル物理学賞を受賞しました。また、太陽から発生した電子ニュートリノが、地球にやって来たときには別の種類のニュートリノに変化するニュートリノ振動を起こしていることを明らかにしたクイーンズ大学名誉教授のアーサー・マクドナルド博士が共同受賞しています。


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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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