2015年医学・生理学賞 大村 智
先生(北里大学名誉教授)※肩書は受賞当時
私たちの体に感染するとさまざまな病気を引き起こす微生物を退治する抗生物質は、別の微生物が持つ化学物質からつくり出されることがあります。
北里大学の大村智博士は感染症に効く薬の開発を目指して、1970年代から全国各地の土を収集。その中にいる微生物が持つ化学物質を調べる研究に取り組みました。
そして静岡県にあるゴルフ場近くの土から「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス」という新種の放線菌を発見。さらに、この放線菌がつくり出す「エバーメクチン」という化学物質に寄生虫や昆虫を麻痺させる作用があることを確認しました。
その後、アメリカの製薬会社によって詳しく調べられた結果、エバーメクチンは人間に感染する寄生虫に効く抗生物質になることが明らかになり、その効果を高めるために改良して感染症薬「イベルメクチン」として実用化されました。
当初は家畜用の薬として使われていましたが、アフリカや南米で問題になっていた感染症にも効くことが明らかになり、これまでに10億人以上に投与され、多くの人々を救いました。
こうした功績を評価し、ノーベル財団は2015年、医学・生理学賞を大村博士に贈りました。また、大村博士が発見したエバーメクチンを詳しく調べ、抗生物質として働くことを明らかにしたドリュー大学名誉リサーチフェローのウィリアム・C・キャンベル博士、さらにマラリアに対する新たな治療法に関する発見をした中医科学院首席研究員の屠呦呦
先生も共同受賞しています。
文