【ノーベル化学賞】野依良治先生の研究-右手型と左手型の分子をつくり分ける不斉合成を実現

2001年化学賞 野依良治
のよりりょうじ
先生(名古屋大学教授
※肩書は受賞当時

野依良治先生は子供時代、「子供の科学」を愛読していた。

 化学物質には、分子の構造や構成する元素がまったく同じであるにもかかわらず、まるで鏡で映したように対照的な物質があります。こうした化学物質は「光学異性体」、「鏡像異性体
きょうぞういせいたい
」、「キラル分子」と呼ばれており、人工的に化学物質を合成しようとすると右手型と左手型が半分ずつできていました。

 それでも右手型と左手型で性質が同じであれば何ら問題はないのですが、異なる性質を持つものがあります。例えば、1950年代から60年代にかけて鎮静剤、睡眠薬として使用されたサリドマイドは、右手型なら薬として働くのに対して、左手型だと奇形を誘発する性質があったため、妊婦さんが服用した結果、多くの障害を持った赤ちゃんが生まれて、大きな社会問題になりました。

 そのため野依良治博士は目当ての異性体だけを合成する「不斉合成
ふせいごうせい
」を可能にする触媒の開発に取り組みました。

 当初の触媒では目当ての異性体の割合は高くはなかったのですが、触媒の改良を進め、目当ての異性体を得られる確率を高めることが成功して、野依博士の研究成果は化学工業に大きく貢献しました。

 その功績が認められて、野依博士は2001年にノーベル化学賞を受賞しました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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