1973年物理学賞 江崎玲於奈
先生(IBM トーマス・J・ワトソン研究所)※肩書は受賞当時
私たちの目に見えるような大きなの世界では、壁に投げた物体が壁を通り抜けることはありません。ところが、電子などの非常に小さな粒子を研究する「量子力学」の世界では壁を粒子が通り抜けることがあり、こうした現象は「トンネル効果」と呼ばれています 。
トンネル効果は1920年代から理論的に説明されていましたが、1950年代、東京通信工業(現在のソニー)で電子機器の開発に取り組んでいた江崎玲於奈博士は、トンネル効果を電子機器で起こそうと、電気の流れを整えるダイオード中の障壁をできるだけ薄くして電気を流す実験を繰り返していました。そして障壁の幅を10ナノメートル(10ナノメートルは10億分の1メートル)まで薄くしたところでトンネル効果を起こすことに成功しました。
実験的にトンネル効果を起こすことに成功した功績から、江崎博士は1973年にノーベル物理学賞を受賞しています。
また、トンネル効果を確認した実験では、電圧を高めているのにもかかわらず、一定の値を超えると、電流が減少するという「負性抵抗」と呼ばれる現象が起こることも発見しました。これにより画期的な特性を持ったダイオードを開発することができました。このダイオードは「エサキ・ダイオード」と呼ばれ、さまざまな電子回路に利用されています。
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