イヌのマーキング
イヌの祖先であるオオカミは群れで狩りをしていて、群れはそれぞれ、よく狩りを行う「コアエリア」(生活の中心の場)を持っています。そのため、コアエリアのあちこちに尿をかけて、尿のにおいで「ここはオレたちのコアエリアだ!」と主張しています。こうした尿のにおいをつけて回る行動は「目印となるにおいをつける」という意味から「マーキング」と呼ばれています。
マーキングの習性は、オオカミを家畜化したイヌにも受け継がれています。散歩に出たときに電信柱などに尿をかけて回るのも、オオカミに見られるマーキングと同じ行動です。
また、散歩に出かけたイヌは、においをかぎ回ります。イヌの嗅覚はとてもすぐれているので、そこに残されたにおいから、どのようなイヌがそこに尿をかけたのかを判断できるのです。尿のにおいから、年齢、性別、体の大きさまで知ることができるというのですから、驚かされます。そして、自分以外のイヌの尿のにおいがすると、そのにおいを打ち消すように自分の尿をかけます。
ただし、ほかのイヌの尿のにおいをかいで、自分よりも強いイヌだと判断すると、引き下がることがあります。
ネコのマーキング
ネコを飼っていると、家の柱などに顔をこすりつけているのを見かけることがあります。これはネコが自分のにおいを柱につける行動で、イヌと同じようにマーキングと呼ばれています。
では、なぜネコは顔をこすりつけるのでしょうか。実はネコの頬やあごには、におい成分を出す分泌腺があります。しかも、この分泌腺から出るにおい成分は、フェロモンといって、ネコそれぞれで違っています。柱やテーブルの足、タンスの角などに顔をこすりつけることで自分のにおいをつけて、そこを自分のコアエリアだとしています。自分のにおいがついているので、ネコは自分の居場所として安心できるというわけです。ネコそれぞれが持っているにおい成分なので、赤ちゃんをつくる相手を探す働きもあると考えられています。
また、柱のような物体だけでなく、飼い主が手をさし出すと手に顔をこすりつけたり、足元にすりよって顔をこすりつけることがあります。しかし、これはマーキングではなく、飼い主に対して親愛の情を示しているのです。ネコどうしでも見られる行動で、私たちが行うあいさつと同じ働きがあります。
もう一つ、ネコが自分のにおいを付けるマーキングだとされる行動に爪とぎが挙げられます。実はネコの足にはにおい成分を出す分泌腺があって、爪とぎをしたところに自分のにおいをつけることができます。木などで爪とぎをするのは、においをつけて爪とぎのあとを残し、自分のコアエリアだと主張しているというわけ です。
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