体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「お尻」です。
お尻はなんのためにある?
あなたの「お尻」は体のどこにありますか? さわってみましょう。 そう、腰の下と脚の上に大きくて、やわらかいお尻が1つありますね。
では、お尻は何のためにあるのでしょう。役立つのが椅子に座るとき。椅子と体が接するところにちょうどお尻がきます。もしお尻が硬かったら、きっと痛くて長い時間座っていられないでしょう。お尻には、脂肪といってやわらかくぶよぶよした厚い肉がたくさんついていて、長い時間座っていても平気な構造になっています。まるで座布団みたいだね。
お尻には脂肪以外に筋肉や骨もあって、腰と一緒に体を支えています。お尻の中には、大殿筋という大きな筋肉、そして坐骨と腸骨、仙骨と尾骨という骨があって、これらがお尻を丈夫なつくりにしています。
お尻と椅子の間に手を入れながら座ってみましょう。何かごつごつと硬い骨が手に当たらない? これが坐骨です。
では尾骨は? 尾骨というのは背骨のいちばん下にある尻尾の痕跡のような骨。人によってはこの尾骨の向きが少し背中側を向いていて、長い時間座ると尾骨がお尻の肉に刺激を与えて痛くなることがあります。
大殿筋のはたらき
お尻の中には「大殿筋」という大きな筋肉がありますが、実はこの筋肉、とっても大切なはたらきをもちます。歩くときの私たちの動作を思い出してください。私たちは他の動物とちがって、二本の足で立ち、背筋を垂直方向にのばして歩くことができますよね。これを「直立歩行」といいます。あなたの背筋もピン!とのびていますか?
この直立歩行に大殿筋は大活躍しています。大殿筋は体が前にたおれないようにしっかりと胴体を支えること、そして歩く際に脚を後ろに引っ張る役割をにないます。
私たち人類は二足で歩くことができるおかげで、歩くときにもともと前足であった手が自由に使えます。こうして、歩きながら物をつかむといった高度な作業を行うことができるようになりました。お尻の中にある筋肉、本当に大切ですね。
お尻の孔
お尻の役割はそれだけでしょうか。
いいえ、お尻は他にも大切な役割があります。お尻は真ん中で2つに分かれているのはあなたも知っていますね。その分かれ目のところには何がありますか?
ちょっと恥ずかしいけど、自分の体のことだから恥ずかしがらないでね。ここは男の子と女の子で随分違う構造なのだけど、今回はお尻のお話だから、“お尻の孔”に注目しましょう。
お尻の孔は正しくは、「肛門」といいます。肛門は、「胃と腸」のお話で出てきました。口から食べた食べ物が消化されて、吸収された後に大腸でつくられるウンチ、つまり「便」が出てくる孔です。いうなれば、肛門は口から始まる消化管の“終着駅”というわけです。
肛門から出るものはウンチだけ? いいえ、オナラもでる。「プ~~」ってすごく臭い匂いがするオナラ。あなたのおうちの中ではだれのオナラが一番臭い? お母さん? お父さん? もしかするとおじいちゃん?
オナラのにおい
オナラって、なぜあんなに臭いのでしょう。
「胃と腸」のお話のときに出てきた腸内細菌叢を思い出しましょう。そう、約100兆個というすごい数の細菌。この細菌から出るガスと、食べ物から発生する臭いにおいが混ざったもの、正確には硫化水素やインドール、スカトールというガスがオナラのにおいの原因です。
でもね、オナラが出るということは、ちゃんと小腸や大腸が正常に働いている証拠だから恥ずかしいことではなく、むしろ大事なことなのです。だからオナラは我慢しないでね。
といっても、お友だちが近くにいて、しかもお部屋の中でオナラがしたくなったらどうしょう。出したらバレちゃう。そういうときは、ちょっとだけ我慢して、少し離れたところとかトイレに移動して「プス~」っと出しましょう。このとき、油断して一緒にウンチも出さないでね、パンツが汚れちゃうから。もちろん、オナラだけでなくウンチもしたいと思ったら遠慮なくトイレでしましょう。我慢しすぎると、お腹が痛くなったり気分が悪くなったり、便秘の原因になったりするから、遠慮してはいけません。
お尻を観察してみよう
残念ながら、あなたは自分のお尻を直接見ることができませんが、鏡で見ることはできますね。
もしかしたら、お尻から背中にかけての辺りに、やや大きい範囲で青い“あざ”があるかもしれませんね。これは、「蒙古斑」といいます。色や大きさ、場所は子供によって異なります。生まれてまもなく、しかも日本人のほとんどの子供に現れるあざです。
でも、この蒙古斑は3歳から5歳、遅くても思春期までには消失します。とても不思議ですね。
尻がつくことわざや慣用句
「尻」がつく言葉を紹介しましょう。 あなたは、「あたま隠して尻隠さず」ということわざを「頭」のお話で紹介したの覚えていますか? そう、身を隠すとき、一部だけ隠れて、本人は全体が隠れていると思い込んでいて実際は隠れていないというちょっと恥ずかしいお話。お尻はあなたの目からは遠くて見にくいから、うっかりお尻がプリっとでてしまうのでしょうね。
その他にも「尻」のつく言葉はまだたくさんあります。「尻が長い」「尻が軽い」「尻が重い」「尻に敷く」「尻を叩く」「尻に火が付く」「尻を上げる」「尻を拭う」などなど。全部すごくおもしろい。
【尻のつく慣用句の意味】
「尻が長い」:話し込んでなかなか帰らない。長居をする。
「尻が軽い」:おこないに重みがない。すぐに行動する。軽はずみなことをする。
「尻が重い」:めんどうでなかなか行動にうつせない。
「尻に敷く」:権力などを使い、強く指示して従わせる様子。
「尻を叩く」:人を励ましたり責めたりしてやる気を起こさせること。人の尻を叩いて何かをさせること。
「尻に火が付く」:さしせまった状況でじっとしていられない。
「尻を上げる」:すわっていたところから立ちあがる。訪ねて行った先から帰ろうとする。
「尻を拭う」:他人の失敗などの後始末をする。しりぬぐいをする。類)尻拭いをする
まとめ
今日のお話をまとめると、おしりは座ったり、立ったりするときの胴体を支える部分。脂肪と筋肉と骨がお尻の形をつくって、座ったときのクッションになる。
そしてお尻の割れ目には肛門という、ウンチとオナラが出る孔がある。ウンチもオナラもお腹の中でできたもので、体にとってはいらないゴミやガスだから出さないといけない。それを出す孔が肛門。
いかがでしたか? 「お尻」とお尻にある孔はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか?
くれぐれもお友だちのお尻をたたいたり、蹴ったりしてはいけませんよ。
大切にしましょうね、あなたの「お尻」。
文
(イラスト/齊藤恵)
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