体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。
今日のお話のテーマは「心臓」です。
心臓は体のどこにある?
あなたの「心臓」は体のどこにありますか? 指で示してみましょう。
そう。心臓は胸のちょうど真ん中から少し左側に1個ある臓器です。左胸に手をそっと置いて、手の感覚をじっと集中させてください。「トクン、トクン」と手に何やら振動を感じませんか? もし感じにくければ、手を置く場所を少し変えてみると、「トクン、トクン」と手に音が感じられる場所がきっと見つかるはずです。
もしおうちの人がいたら、おうちの人の胸に耳を当ててごらん。とても大きな、「ドックン、ドックン」の音が聞こえると思う。これが心臓の音ですね。
心臓はなんのためにある?
では、心臓はなんのためにあるのでしょう。
心臓から「ドックン、ドックン」と音が鳴っているのは、実は、心臓があなたの体の隅々
に血(血液)をがんばって送っている証拠です。心臓はよく「ポンプのような役割」といわれるのだけど、それは、血液をずっと送り続けるからです。
私たちの体の中には、とてつもなく多い数の細胞がいて、その細胞が生きていくために必要な酸素や栄養分は、心臓から送られた血液の中からもらっています。だから、心臓はいつも酸素や栄養分をたっぷり含んだ血液を“すべての細胞”に送り届ける必要があるわけです。
もし心臓がポンプのはたらきをやめてしまうと、血液は流れません。血液が流れなかったら、あなたの体の中の細胞は生きていけない。だから、心臓ってなくてはならないとても大切な臓器なのです。
心臓の4つのはたらき―ポンプ機能―
ではここで、少しむずかしいけれど、心臓のポンプとしての役割を大きく“4つ”に分けて説明します。
1つ目は、すべての細胞に酸素と栄養分を含んだ血液を送り届けること。2つ目は、細胞に酸素と栄養分を送った後の(酸素と栄養分が少なくなった)血液を心臓に戻すこと。3つ目は、その酸素と栄養分が少ない血液を「肺」という別の臓器に送って酸素を満タンにしてもらうこと、4つ目は、酸素が満タンになった血液を再び心臓に戻すこと。
心臓は、この1つ目から4つ目までの役割を、私たちが起きているときも寝ているときも、ずっと、ずっと休まず繰り返します。
心臓からなぜ音がでるのか?
お医者さんに、胸に聴診器
をあててもらったことはあるよね?
聴診器を使うと、あなたの心臓の「音」がすごくよく聞こえます。幼稚園や小学校でも、健康診断といって、ときどきお医者さんにあなたの心臓の音を聞いてもらうことがあるけれど、あれはあなたの心臓がちゃんと動いていて、血を送り届けられているかどうかを、音を聞いて診察しているのですね。だから、順番待ちをしているときはお友だちと廊下でおしゃべりしたり、騒いだりせず静かに待ちましょう。
ところで、心臓からどうして音が出るのでしょう?
心臓の中には4つの部屋があって、その部屋が大きくなる(ふくらむ)時期と小さくなる(ちぢむ)時期が交互に起こります。大きくなる時期を拡張期、小さくなる時期を収縮期というのだけど、大きくなる時期に血液が入り込み(吸い込む)、小さくなる時期に血液が送り出さ(吐き出さ)れます。
そういった大きくなったり小さくなったりする心臓の動きに合わせて、心臓の中の「弁」という血液の流れのペースを決める“扉”が開いたり閉じたりします。その弁という扉が閉じるときに「音」が鳴るのです。あなたのお家にある扉も閉めると「バタン!」と音がするでしょ? それと同じですね。
話をもどすと、この弁が閉じたときに出る音が「ドックン、ドックン」や「トクン、トクン」という音の正体なのですね。
こころ(心)の臓器?
ところで、「心臓」という名前はおもしろいもので、「こころ(心)」+「臓器」と書きます。あなたは普段何も感じない心臓の動きが、いざ緊張するとドキドキと感じるようになったことはありませんか? 心臓は、そんなあなたの心の状態と同じ動きをすることから、昔の人は、心は心臓の中に宿っているものと考え、「心臓」と名付けたのです。
心臓が動く(拍動する)回数はいくつ?
では、一度あなたの心臓が1分間に何回トクン、トクンするか、数えてみましょう。ちなみに、この心臓の「トクン、トクン」の動きのことを「拍動(鼓動)」、1分間の拍動の回数のことを「心拍数」といいます。1分間は60秒です。おうちの人に時間をはかってもらって、あなたは心臓の「トクン、トクン」がわかるところに手を置いて、心拍数を数えてみましょう。おうちの人も一緒に自分の心拍数を数えてもらいましょう。
はい、スタート!
いかがでしたか? 何回拍動したかな?
人によって、年齢によって、そのときの状況によって心拍数は変わるのだけど、きっと、おうちの人よりもあなたの方が多かったんじゃないかな? 大人は普通、1分間に60~90回拍動します。乳幼児だと、心拍数は大人の数より多くなる傾向があります。
心臓は生きている限りずっと動き続ける臓器なわけだけど、そうすると心臓って一生で何回拍動するのでしょうか。ちょっと計算してみましょう。1分間に約70回とすると、1時間に4,200回(70×60分)、1日に100,800回(4,200×24時間)、1年で3,650万回(100,000×365日)、人生80年として29億2,000万回(3,650万回×80年)。もう想像もできないくらいたくさん心臓は動くのですね。しかも一度も休まずに。信じられません!
実際には生まれる前からすでに心臓は動いているし、運動をすると心拍数は増える、ましてや100歳まで生きるとなるともっと増えますね。心臓は超はたらきものでしょ!?
まだある心臓のおどろきのはたらき!
心臓のおどろきのはたらきはまだあります。
もしもあなたが全速力で走ったら、きっとあなたの体の細胞は普段よりたくさんの酸素や栄養分(エネルギー源)がいるはず。そこで心臓は心拍数を多くして、細胞にはやく、そしてたくさんの酸素や栄養分がいきわたるようにペースをあげます。そしてあなたが走るのをやめると、再び心拍数がもとに戻る。だから、心臓はあなたの体の状態に合わせて心拍数を多くしたり、少なくしたりするなど、その数を調節(コントロール)できるのです。
心臓ってほんとうにスゴイよね!
まとめ
今日のお話をまとめると、心臓の役割は、4つのポンプとしてのはたらきをもとに、血液をすべての細胞に送り届けること。心臓の音は、心臓の中にある「弁」が閉じるときに出る音。心臓は、あなたの体の運動状態や心の状態などに合わせて心拍数を変えることができる。
いかがでしたか? 「心臓」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか? 大切にしましょうね、あなたの「心臓」。
文
(イラスト/齊藤恵)
【連載バックナンバー】