『子供の科学2024年4月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。
イラスト/obak(@oobakk)
おためごかし〜なインチキ科学
お為ごかし(おためごかし)という言葉があります。
意味としては「人のためになるように見せて実際は自分の利益を図ること」と国語辞典などには書いてあります。多くのニセ科学に共通するのは、誰かを助ける、地球温暖化を止める、汚染物質を分解する……など、ご大層なことを並べて、特定の効果の無い商品を売りつけるところにあります。
身も蓋もない言い方をすれば、病気で困ってる人に効果のないニセ薬を高値で売りつけるというのと、差はありません。
さて、最近、地球温暖化や原油の枯渇など、環境を取り巻く問題は深刻化しており、多くの科学者が、原因はどこにあるのか? どういった対策ができるのか? 世界中の天才が知恵を振り絞っています。
しかし、そんな中、水と二酸化炭素からガソリンができるとか、コンセントをつないでスイッチオンすると、どんどん二酸化炭素を吸収していくから、地球から二酸化炭素が減って地球を冷やす……みたいな話をする人たちがテレビなどで紹介されています。
エネルギーのキホンの話は本誌でした通りです。
そちらで覚えたくらいのレベル感で考えると、ガソリンが燃えて水と二酸化炭素になるなら、この2つを合体させれば、ガソリンに変えることは可能なのかどうか……ですが、可能です。
ただし、人間の化学の技術では、「ガソリン⇔水+二酸化炭素」の行き来を同じエネルギーで行うことは現在できておらず、何十倍ものエネルギーをかければ、なんとか二酸化炭素と水でガソリンらしきものをつくることは不可能ではありません。
でもこれは、言い換えれば、無限の電気エネルギーのような無料のエネルギーが無限にあればこそ……という話ですし、そもそもそんなエネルギーがあるなら、こんなことをしなくても、電気自動車をその電気で走らせればいいじゃないか……という話になります。
エネルギーは降って湧いてこない
二酸化炭素をアルカリの液体の中にブクブクして二酸化炭素を捕まえるというのは、ようするに、小学校でも習う、石灰水に二酸化炭素をブクブクすると白濁するあれですね。二酸化炭素は弱い酸なので、強いアルカリに触れると吸収されて炭酸塩となり、水の中を漂います。
でもここで使っている水酸化ナトリウムなどの強いアルカリは、膨大な電気を使って海水を電気分解してつくったものです。じゃあその電気はどこからきたの? というと、燃料を燃やしてつくったか、原子力か……という話になってくるわけです。
そもそも、大気中の二酸化炭素は、多くても0.04%とかそういう次元です。そんな微量の二酸化炭素を集めるために、電気を使ってエアーポンプを動かして、電気を使ってつくった強いアルカリ溶液に溶かして二酸化炭素を減らした……ってこれ、減らしてるといえるでしょうか?
例えば、30cm×30cmの地面を使い、人間が手を触れずにわずか半年で1kg近い二酸化炭素を吸収する方法が存在します。なんてことはない、そこに植物を植えるだけです。例えば、ひまわりは土から栄養素を吸収し、太陽光を使い光合成をして二酸化炭素を炭素源として取り込みます。ひまわりが3、4kgに成長するので、そこに含まれる炭素の量から概算するとだいたい1kg程度です。
そうなのです。もし人間の科学で二酸化炭素から燃料をつくるというなら、植物を超えなければいけないわけです。もしくは同等くらいでどこでもできる……とならないといけないわけです。難題です。
じゃあ人間が安くエネルギーを手に入れるには……となると核エネルギーくらいしかないわけです。
核エネルギーも、星ができたときの凄まじいエネルギーによって、すごく原子としては不安定なウランなどの元素が出来て、未だに地球に残っているからこそできる技術です。
こうした元素はちょっと刺激を与えてやると、その元素が割れて別の元素に分かれるというとんでもない現象のときに凄まじい熱エネルギーが出るので、すごいエネルギーを生み出すことができる。
ウランをわざわざ採掘してきて核燃料にして、核分裂させてエネルギーを取り出すというのは、エネルギーコスパがいいわけです。しかし、核廃棄物の問題などもあるし、事故のとき危ないよね……といういろいろな問題もつきまとうので、核エネルギー最高ハッピーハッピーとは簡単にはいかないわけです。
話が逸れてしまいましたが、そういうわけで、エネルギーっていうのはどこからどうきてるのか? 太陽のエネルギー(と星が誕生したときのエネルギー)だけで、我々はすべてのエネルギーをまかなっているんだと考えると、すべてエネルギーという概念で多くの学問がつながっているということがわかると思います。
文