『子供の科学2024年3月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。
イラスト/obak(@oobakk)
エネルギーで考える太陽光発電の問題点
本誌ではエネルギーの最低限の話をしました。
燃料という化学エネルギーが、熱エネルギーになり、それが運動エネルギーをつくり、運動エネルギーから電気エネルギーに変換された。火力発電のしくみを、すごく簡単に説明するとこうなります。
このエネルギーという概念で、世界を見ると、人間は太陽光エネルギーを使った生命体であるとさえいえます。原子力発電以外は、人類のエネルギーの源はすべて太陽です。水力発電や風力発電でさえ、地球に降り注ぐ光エネルギーがあたったことで、気候が生まれ、大気が循環して雨が降り、川が流れるわけで、太陽は地球上のほぼすべてのエネルギーの根源なわけです。
核エネルギーは、星が生まれるときになどの宇宙的な凄まじいエネルギーで出来上がった元素で、元素自体が、不安定で高エネルギーなので、それが核分裂するときにすさまじいエネルギーを放出することができるというわけです。いわば星のエネルギーの残り香みたないなものです。
話を太陽エネルギーに戻すと、石炭や石油は、大昔の植物などの有機物が地殻中で変性したもので、もともとはそこら辺の木などの植物なわけで、そういう意味では、何億年前かの太陽光のエネルギーを石油という化学エネルギーとして燃やして使っているわけで、これまた太陽エネルギーなわけです。
さて、すべてのエネルギーは繋がっています。そしてエネルギーは、別のエネルギーに変わるときにロスが必ず出ます。
例えば、ポットを10個用意して、最初のポットに熱いお茶を入れます。それを次のポット、そして次へ……と何回もやったら、最初入ってた量より減る気がしませんか? ポットのお茶はすべて出きらないので少しずつ減りますね そしてお茶も冷めています。
これと同じようにエネルギーの移動でも同じように、熱や音、意図しないエネルギーとして逃げていき、エネルギーは変換するたびに減っていくのです。
例えば、火力発電は燃やしたエネルギーの55%程度が電気エネルギーになります。電気エネルギーになったとしても、送電線で通る間に電波という形で漏れ出たり、例えば、充電をするだけでも電気エネルギーはそのまま100%入りません。電池の中の化学反応に電気エネルギーを使って化学エネルギーとして蓄えていくので、充電中は発熱したりしますね。当然使うときも熱が出てロスが生じます。
このエネルギーは変換するときに減るというのもすごく大事で、この考えがあると、永久機関などにダマされなくなります。例え、YouTubeで永久機関っぽい動画を見つけても、エネルギーの原則で考えると、永久に動き続けるはずがありえないと、トリックがわからなくても判断できるわけです。
太陽パネルってどう?
では今回は、この無限のエネルギーを供給している太陽を直接エネルギー源にする、太陽光パネルについて、いろいろ考えてみましょう。
太陽光は晴天時には、1㎡あたり、毎秒1500Wくらいのエネルギーがあります(実際はもう少し低いですが、今回は無視しておきましょう)。毎秒1500Wのパワー。1mX1mのエネルギーを回収できれば、エアコンがフルパワーで動く計算です。ドライヤーをフルパワーで動かすとだいたい1500Wです。
しかし、現在多く流通している太陽光パネルはエネルギー効率は10〜15%。夏場は発電効率はよいのですが、半導体の特性で温度が上がると性能が下がってしまうわけです。いいとこソーラパネルを使っても1mX1mで、100〜150Wのエネルギーを回収しかできません。つまり1台のエアコンを動かすのに、10mX10mの面積のソーラーパネルが必要なわけです。家にソーラーパネルつけても電気代が0円にならないわけです。
太陽光発電に使うソーラーパネルの製造エネルギーは、その生み出すエネルギー約10年分くらいといわれています。まぁ工程が複雑なのですが、運送エネルギーや設置につかうエネルギー、工事に必要なエネルギーを入れると、もっと膨らむでしょうが、ひとまず10年分と考えておきます。
さらに毎秒1500Wというパワーは、真夏の話で、冬場は太陽が真上ではなく、よりいっそう斜めからになる(太陽の昇る角度が浅い、つまり日が短い)これにより、斜めに入るエネルギーは半分くらいになります。日照時間が短い上に太陽自体のエネルギーもパネルに垂直に入らないことでかなり減ります(これは単純計算で半分になるとかではないけど)。
そんなわけで、太陽光発電で黒字エネルギーにするにはソーラーパネルが10年くらいは無傷で働いてくれる必要があるのですが、日本は四季があり、場所によっては雪が降ります。たまに豪雪地帯に行くと山奥を切り開いて太陽光パネルが設置されているなんてものがあり、周りを山で囲われているということは日照時間が短くて、当然雪が積もったら発電は不可能です。なんなら雪を溶かすために、電熱線がついている太陽光パネルまであって、もう発電したいのか、エネルギーを無駄使いしたいだけなのか、意味不明なものが世の中には実は多くあります。
さらに、台風などの大風、雹や石がぶつかることで破損せずに10年野外で、持つことの難しさ。もちろん雑草に覆われるだけで発電できなくなるし、今度は火災の可能性まで出てきます。ソーラーパネルの製品寿命は25年程度といわれていますが、天命を全うしても、今度は廃棄のための取り組みが不十分で、かなり有耶無耶になっています……。
そんなわけで、太陽光パネルは現在はまだまだ問題だらけなのですが、そうした問題も、技術躍進で解決するのではないかともいわれています。
まず、製造技術の向上により、製造エネルギーと精算エネルギーが釣り合うのが3、4年レベルになってきていて、製品寿命もかなり延びてきているという点。また太陽光パネルの表面処理の向上により、冬場の弱い日光でもそれなりには発電できるため、製造コストが安くなった分、そこでまかなえてしまう……など、ゆっくりと既存の問題は解決してきているようです。
そもそも熱によって性能が落ちてしまったり、パネルの精算、設置コストが高くなる、シリコン型ではなく、色素増感やペロブスカイト型の次世代太陽光発電の技術開発なども進んでいるということで、設置や廃棄で問題がかなり出にくくなるという(しかもペロブスカイト型の場合は材料が日本がトップシェアである)などの明るい話題も当然あるので、今後、そういった技術が実用化されていき、現在の問題を払拭していくかもしれません。
今回は、太陽光発電の話に終始してしまいましたが、太陽光パネル1つとっても、いろいろな問題、乗り越えないと行けない課題があるという、発電方法にこれという1本はなく、多くの発電方法を人間は開発して、技術を高めていかないといけないということが分かります。
次回から、このエネルギーという考えを持って、いよいよ、ニセ科学がニセモノである点を見ていきたいと思います。
文