『子供の科学2023年11月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。
イラスト/obak(@oobakk)
実は日本は科学を勉強するのに最適な国!?
というわけで、WEB版の子供の科学です。誌面からの続きで読んでいる人は再びコンニチワ。WEB版だけの人はお久しぶりです。
本誌では科学者とは? という話をしましたが、じゃあどこで勉強すればいいんだ? どうやって勉強できるんだ? と思う人がいるとおもうので、その辺の話をしていきましょう。
ここから先は年齢を少し上げていきますが、がんばって読んでみてください。
さて、日本は科学の探究にはあまり向いていない国です。なにより基礎研究の要である大学に予算が乏しく、みんなお金が無いから就職するために知識を学ぶくらいで、新しい未知のジャンルを開拓したり、なんだかよくわかんけど、すげえみたいな研究をする余裕がなくなっているからです。
それは国が教育の場をアップデートせずに、何十年も現代科学にあわせた内容にしてこなかった、未だに計算機も使わずテストをさせているようでは、思考力を問いたいのか、計算力を問いたいのかさえハッキリしませんし、そんなグダグダな教育カリキュラムで受験というよくわからない産業がお金を産むので、教科書を時代にあわせないという……悪循環が続き、気がつけば日本の教科書の内容は世界的にもかなり劣る内容になり、学力自体も低下してしまいました。
国が基礎研究を大事にしないので、多くの研究者は日本を去り、アメリカやシンガポール、中国の大学など、海外に渡るという話もなんら珍しくない話です。
科学者は別に科学を押し進めて、新しいことを発見し、積み上げるのが仕事ですから、国や場所なんてのは関係ないので、日本の環境が悪ければ、別の世界にいくだけではあるのですが……教育というものは、国力の要なのに、それが優秀な人ほど逃げ出すようなしくみを作っているのは、どう考えてもおかしい……という状況です。
ともあれ、日本という国はアテにはなりませんが、海外で科学を勉強しないと気づかないのですが、実は学問を勉強していく上で、日本語は実はすごい言語であるということは知っておいて損はないと思います。
日本語って、結構すごい
現在、世界中の科学の基本言語は「英語」です。
しかし、母国語ではない言葉で長々と文章や本を読むのは相応に疲れます。自分も一応は論文も英語で読み書きしますが、こうやって日本語で書いている方が楽だし、感情をのせる余裕もあります。
そう、この日本語は、相当多分野の学問を網羅している、すごい言語です。なんなら英語圏より専門書が充実している分野だってたくさんあります。つまり、日本語が読めるというのは、相当学問においてアドバンテージにさえなるわけです。例えば、食品加工の専門書なんか英語ではほとんど見たことがありません。日本の食品添加物を使った食品加工の技術は、間違いなく世界一の水準です。自分は生き物が好きなので昆虫や植物の本も多く持ってますが、アメリカの博物学者に見せたところ、日本はこんなマニアックな専門書があるのか!!! と普通に驚いていました。
多くの国の言語では、英語で解像度の上がった科学の世界を表す言葉さえなかったりします。
例えば、タイの医学の世界は英語ベースなのですが、タイ人の先生は、タイ語では臓器の細かい部位の名前がそもそもないから、現代医学を勉強するには英語しかない…と仰ってました。
しかし日本語は臓器の名前はなんなら英語より解像度が高いくらいにあります。先人の発見から、英語の用語に日本語でつけられた名称さえ多くあるくらいです。
それくらい日本語というのは科学においてすごい解像度を持った言語であり、日本語ができるというだけで、相当な情報にアクセスできるというアドバンテージがあるのです。これは日本にしか住んでいなかったら見えていなかったでしょう。
その上で、日本の専門書を見直すと、それはもう本当に本当に、なんでも勉強できます。
日本語ができるというだけで、英語がカバーしきれない分野まで細かく母国語で勉強できるというのは、すごいことなので、もっと多くを知ることができる「専門書」というものをみんな手にしてみるべきなのです。
専門書……というと、値段も高いし、あまりに多すぎて何をどう選べばよいのか分からない……ましてや自分の専門外だと分からない……という人も多いかと思いますので、その話はまた今後……。
文