『子供の科学2023年10月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。
イラスト/obak(@oobakk)
悪はどうして負けるの?
そもそもワルモノって何が悪いの?
「悪」とは、例えばゴミを捨てに行くのがめんどくさいからその辺にポイ捨てする、欲しいものがあれば盗んだり奪う方がお金が減らずに手に入れる……でもそういう人がそんなにたくさんいないには理由があります。なになに? 法律で禁止されているから? それも1つの理由ですが、それだけではありません。
そもそも悪いことをするほうがお得であれば、世界は悪い人で埋め尽くされているはずです。でも、なんだかんだで、悪い人は全体からみると少なくて、いい人で構成されているようにみえます。
厳密にはいい人というよりは、どっちでもない人です。人は得をするために選択をします。この選択をする人の割合で社会の治安ができあがるわけです。
「ナニイッテンダぁ〜コイツ」って顔をしないでももう少し読んで下さい。
「悪いことをしない」というのは損だからしない、損の反対、つまり得なのでしない。だからこそ、悪い人は少数派なのです。悪いことをすると損……これは本誌の話でも出た話ですよね。
逆にいえば治安の悪い国というのは、悪いことをしたほうが得まである……なので、悪いことが横行して、結果的に「治安の悪い国」という社会が出来てしまうのです。
これは国全体としては、観光地としての魅力も下がりますし、なにより発展性が阻害されます、つまり国として力を失うということです。
国を豊かにしようと井戸をいっぱい作って水くみをしないで勉強しましょうといってもみんなが井戸を破壊して金物屋に売るような国民では国が豊かになりません。
そう、つまり損ですよね? だから国はなんとかして治安をよくしようといろいろな方法を考えるわけです。
これが今回のテーマです。悪いは損なのです。
「悪い」って何だろう?
では「悪い」って何が悪いんでしょうか? 頭痛が痛いみたいな話なんですが、もう少し考えてみましょう。
例えば、生きものを殺すことは悪いことと教わります。でもそれも度が過ぎると、家畜を殺して肉を食べるのも悪なので、人間は野菜だけを食べて暮らせ? みたいな変な話になります。残念ながら人間は野菜だけで体を健康に成長させることは無理ですし、そもそも野菜だって植物なのにこっちは殺していいのか? みたいなよく分からない話になるからです。
いやいや、法律違反が悪だ……というと、今度は法の規制を逃れているだけの脱法ドラッグは正義になってしまいます。なんなら非合法に指定されている麻薬より危険な物質も数多くあるのに、それを売ってる人は正義の人なのでしょうか? そんなわけないのです。例えば、アナタの大事な人が悪漢に酷い目に遭わされているとき、悪漢の後ろから鉄パイプで殴り倒して救うことは暴力だから悪? つまり見殺しが正義?
そもそも法律だって、意味の分からない悪法はいっぱいあります、日本の税法なんか正直いって正気の沙汰ではないですよ……。
そう、世界の善悪というのは、白黒ハッキリしたものより、グレーどころか玉虫色の判断しがたいものなのです。
そこで白黒ハッキリしたい! という短絡的な考えは上記の軋轢を生むので、まぁまぁな悪ですね(笑)
なので「悪」というのは結果的に「損」になる行為という雑な括りでしか考えることしかできないわけです。
しかもこの損得というのは、さらに時代の価値に左右されるので、時代によっては侵略戦争さえ、得になり悪ではなかった、なんなら正義であった時代もあったわけで始末が悪いのでこの辺にしておきましょう。
とはいえ、白黒つけなくても、これはよくないよな、これはよいよな という「基準」は社会全体の空気を読むと、だいたい間違うことは無い・・・といえます。
出たよ……空気読め……ってヤツって思う人もいるかと思いますが、これこそが勉強なのです。
そしてそれらは社会をよくみて、必要なことをちゃんと勉強して、その上で自分が自分として判断していくという「自立」が根底にあるのではないでしょうか?
そして自分で社会の中での自分の価値を見いだし役割をこなす。これが「自立」で、自立には勉強が欠かせないのです。そんなわけで次回は「お勉強」をテーマに少し話をしたいと思います。
文