【ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え! vol.11】賢く生きるには大事だという科学リテラシーってやつを実際に手っ取り早く身につけるにはどうしたらいいの? つづき【子供の科学7月号】

 『子供の科学2024年7月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。

イラスト/obak(@oobakk

さてさて教養を深めよう

 本誌では、理科の「キホンの常識」について話をしてきました。マジの科学知識ゼロの人が、科学をちょっと分かるまでになる方法を今回はなぞっていきたいと思います。

 まず、科学知識ゼロの人がSNS便りに勉強しようとするのは……絶対にダメです。

 本誌でも話をしたように、不勉強だった人が、安易に答えを求めようとする検索候補には、もうそれは信じられないくらいのニセ科学、陰謀論、カルト宗教、情報商材……ありとあらゆるハズレが眠ってます。

 昔は、わからなかったら、ネットで検索しよう……みたいな話もあったのですが、今は、それが信用に足りるものであるかどうかがわからないのです。ましてや自分が知識ゼロだった場合、その真贋を見抜くことは徒労です。

 気がつけば、親戚がどっぷりニセ科学や、陰謀論にはまっていた……なんて人はいるでしょう。その原因がこの「自分でなんとなくたどり着いた」というところです。

 人間は、自分で努力して得た物を「正しい」と思う習性があります。

 特に、人は不安に駆られると、手っ取り早く答えを知って安心したいという衝動に駆られます。

 最近だと、新型コロナの流行で、不安に駆られた人が大量にネットで検索した結果、こうした陰謀論のトラップにひっかかり、そこで勉強というなのウソ科学を教え込まれてしまうわけです。

 その結果、科学的に考えればとても正気ではない、異常な話を「これが世界が隠してる真実なんだよ」というようになるわけです。常識的に考えて、科学をずーっとちゃんと勉強してきた人に、ほんの数日前、なんとなく見た動画で得た知識が勝ったり正しいわけはないのですが、特定の人は、自分でそこにたどり着いたことで、「これが真実だったのか!」ってどハマりしてしまうわけです。

 一度間違った科学にはまってしまうと、そこから、白砂糖を食べると脳が溶けて死ぬとか、そういった間違った常識をどんどんインストールされてしまうわけです。

 コンピューターウイルスの一種であるマルウェアなんかも、一度うっかりインストールしてしまうと、どんどん悪質なウイルスやスパイウェアが勝手にインストールされて、パソコンのセキュリティを破壊してしまうことがあります。インチキ科学や陰謀論にハマるというのは、これの人間版です。つまりマルウェアではパソコンが壊れるのと同じで、その人の人生が壊れるわけです。

 なので、本当の本当に、ダマされないためにもホントの最初から科学を積み重ねる必要があるわけです。

自分だけの知識の塔をつくるんだ!

 科学を積み重ねる……っていうと、難しく感じますが、別にどこかでテストを受けるわけでなし、ただただ知れば知るほど、生活に役に立つだけです。算数だって、できれば割引の金額がわかるじゃないですか。あれと同じです。漢字だって読める漢字が多ければ、本を読んでるときに読めずに止まったりしませんよね。

 一番いいのは、まともなリテラシーを持っている人に小学校理科を教えてもらうことです。

 しかし、この「まともな人」を装ったヤバい人も世の中ゴロゴロいる上に、中には医師免許をもって、反医療、反ワクチン活動なんてものをしてるヤバすぎる人もいます(承認欲求の魔物に勝てなかったとか、純粋に困窮しててそうしたニセ科学ビジネスに加担しているとか理由はさまざま)。

 そんなわけで、一番信頼出来るのは小学校の理科なのです。

 小学生向けの理科の参考書を買ってくる。それだけです。

 まずは、それをザックリ読む。

 それだけで世界を構成する最低限の科学がそこにあります。その後は、小中の理科をおさらいするような本や、そこから、派生して、それを理解するためのYouTubeチャンネルなどを探していけば、そうそうダマされることはありません。

 代替にして、マトモじゃない科学は「これだけでOK」、「これだけが悪」、「〜すればいい」みたいな単純すぎる理論が多く、悩んでいる人に対しては、「これが……真実……」と悪い刺さり方をしてしまうのですが、常識的にみればただの戯れ言で、どうみてもウソ乙なわけです。

 そんな感じで、自分で1つ1つの知識を整理していくと、これは自分は得意だわ……これは興味あるかも……といった「得手不得手」が見えてきます。例えば、自分は数学的思考がとても苦手で、数学ベースの話は騙される自信があります。でも、その反面、薬理学や化学をベースとした物質の話、生物や医学に根ざした話は得意なので、知識もそれなりにあります。なのでインチキをベラベラいう人の数学的ウソには気づくことができなくても、医学的ウソには気がつけるわけです。

 初学者は、まずざーっくり全体を知った後、自分の「得意」を探すことができればラッキー。

 これは実際の勉強でも同じで、得意分野を徹底してやりこむことで、他の分野でもその同じ勉強法を通すことで学習効率を上げるという方法につながるからです。

 そうしてつくった知識の塔は堅牢で、そうなるとその分野のインチキにはそうそう騙されることはありません。そして、その知識の塔を建てるためのノウハウを他の分野にも応用して、知識の塔を増やしていき、それを村にして、そして町に……といった具合に自分の「常識」で照らせる部分を広げていくのです。

 そしてこの「照らしていく」という行為そのものが、実は「科学の本質」であるというところにまで、来たら、アナタはもうこちら側です。もっと深く、深く、科学をともに学んでいきましょう!

子供の科学2024年7月号

7月号は化石を大特集! 街中でアンモナイトを探すコツから、恐竜の全身骨格展示のヒミツまで、知らなかった化石の一面が見えてくる! 古生物学者による化石を使ったおすすめの自由研究テーマも紹介。 さらに、大理石に隠れた化石を探す、体験型の特大ポスターつき! 他にも、野菜の残りで布を染める「のこり染め」企画やスイーツまんが連載、段ボールでつくる「レインスティック」の工作など、盛りだくさんな内容です。

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くられ先生 著者の記事一覧

自称、不良科学者。サイエンス作家、科学監修、大学講師と多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」での配信や、『アリエナイ理科ノ大事典』シリーズ(三才ブックス)、『アリエナクナイ科学ノ教科書 ~空想設定を読み解く31講~』(ソシム)などの著書も多数。

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子供の科学 2024年 12月号

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