《子供の科学 深ボリ講座》もっと試そう!「からだの錯覚」

『子供の科学』2023年9月号の「ビックリ!! フシギな錯覚体験 だまされる体」をさらに深ボリ。本誌では紹介しきれなかった「からだの錯覚」の体験方法を紹介していきます。ぜひ試してみましょう!

 『子供の科学』2023年9月号の特集では7種類の「即錯
そくさく
」を紹介した。「即錯」は今回取材をした名古屋市立大学大学院の小鷹
こだか研理
けんり
先生たちが考案した、すぐに体感できる即席の錯覚で、他にもたくさんある。ここでは、特集記事で紹介していない2種類の「即錯」を紹介しよう。どちらも特別な道具は不要で、手軽にできるので、ぜひ試してほしい。

影に引き寄せられる手

 体の固有感覚があてにならないことは簡単な実験でわかる。
 白い紙とスマートフォンを用意する。スマートフォンのライトをつけて、ライトを上向きにして、テーブルの上に置く。そして白い紙を水平にして、スクリーンのように使う。これが実験セットとなる。

「影に引き寄せられる手」の実験方法。白い紙(A4サイズのコピー用紙など)を片手で持って、テーブルの上に置いたスマートフォン(ライトを点けた状態)との間に他方の手のひらを入れて、手の影が映るようにする。

 手のひらを白い紙とライトのあいだに配置すると、手の影が白い紙に影として見える。手の位置やスクリーンの位置を変えると、手の影は大きくなったり小さくなったりする。この実験ではまず、手の影の大きさが実際の手の大きさとあまり変わらないように調整する。うまく調整すれば、ほとんど同じ大きさの影が、実際の手の少し上に見えるようになる。

手の位置やスクリーンの位置を変えて、手の影の大きさが実際の手とあまり変わらない大きさになるように調整する。

 このときに、紙をさっと横に引くと、自分の手が目に入るようになるが、思っていたよりも実際の手の位置が下にあることがわかるようになる。中には手が下に落ちるように感じる人もいる。 
 つまり、自分自身の手の位置感覚が、手の影に引き寄せられて、上に上がっているのだ。

 より、凝った実験をしたければ、箱を使うこともできる。「手がある」と思っている高さと、実際の自分の手の高さがだいぶずれていることが体験できる。体の手足の位置を知らせる感覚は、あてにならないのだ。

箱を使った場合の「影に引き寄せられる手」の実験。手の影を見ながら、自分の手がどのくらいの高さにあるかを示してみる。

 小鷹研究室のYouTubeでも「影に引き寄せられる手」の動画が公開されている。箱を使った場合の実験の様子を紹介しているが、どんな結果になっているだろうか。

おばけドローイング

 自分の体は思っているほどちゃんとコントロールできていない。鏡を使った「おばけドローイング」でそれがよくわかる。

 鏡と2枚の紙、2本のペンあるいは鉛筆などを用意する。鏡を正面に置いて、その左右に一枚ずつ紙を置く。そして鏡を見ながら、両手で同時に、対称になるように絵を描く。描き上がったら、どんな絵になっているか見てみよう。

「おばけドローイング」の実験方法。鏡面を見ながら、両手で同時に、対称になるように絵を描く。

 鏡の向こう側は、思っていたよりもずっとおかしな「おばけ」になっている人が多いだろう。

編集部員が「おばけドローイング」を体験。写真だと左側が鏡面で、それを見ながら、『子供の科学』の人気連載「ビーカーくんがゆく」の「ビーカーくん」を描いてみた。

 「おばけドローイング」も同じく、小鷹研究室のYouTube動画が公開されいる。こちらも参考にして実験を試してみるといいだろう。

 本誌やこの記事で紹介している「からだの錯覚」を体験してみて、意外と自分の体なのに自分の思い通りにならないと思ったかもしれない。また、自分の体をどう認識しているのか不思議に思ったかもしれない。「からだの錯覚」を通して感じたことから、体の認識について考えてみるのもいいのではないだろうか。

写真/和久井ひとみ
イラスト/新保基恵

取材・文

森山和道 著者の記事一覧

サイエンスライター。1993年に広島大学理学部地質学科卒業後、NHKにディレクターとして入局。1997年以降はフリーライターとして科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。専門は脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。WEB:http://moriyama.com/
Twitter:https://twitter.com/kmoriyama
著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)

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