《子供の科学 深ボリ講座》知っておくと世界が広がる 地形図っておもしろい!

今回は「子供の科学」2023年7月号の「地図」の特集記事「地図を読もう! つくろう!」を深ボリ。地図にはネット地図、都市地図、観光マップなどいろいろな種類があるけれど、地形図って聞くと「学校で習ったけど難しい…」って思うかも? 地形図が読めるようになると、おもしろい発見がいっぱいあって「知の世界」がぐーんと広がるぞ! 国土地理院のWeb地図を使っておもしろい地形を探したり、クイズに挑戦したり、地形図で遊んじゃおう!

取材協力/空想地図作家・武蔵野大学高等学校非常勤講師 今和泉 隆行 

Part1 地形図ってどんなもの?

出典:地理院地図(電子国土Web) 長野県松本市

 地形図は、土地の起伏や高さ、道路、建物、河川、土地利用などをあらわした地図。ほかにも地名や町の境界線、海岸線、植生、資源など、たくさんの情報が盛り込まれている。

 地形図にはいろいろな決まりごとがあり、それらが情報を読み解くための重要なカギとなる。ネット地図や都市地図とは違った特徴もあるから、おさらいをしつつ主なポイントを押さえておこう!

ポイント① 方位と縮尺

 方位は地図の上が「北」。国土地理院が発行する地形図には、縮尺1万分の1、2万5千分の1、5万分の1の3種類がある。この縮尺の分母が大きいほうを「縮尺が小さい」という。たとえば実際の距離1,000m(1km)は、2万5千分の1地形図では4cm、5万分の1地形図では2cmで示される。ちょっとややこしい?

ポイント② 等高線

 地形の高低は、同じ高さの地点を「等高線」で結んであらわす。2万5千分の1地形図なら、10mごとに主曲線、50mごとに計曲線が引かれている。等高線の間隔が狭いところは傾斜が急で、間隔が広いところはゆるやか。また、山頂から見て等高線がはり出しているところは尾根、逆に引っ込んでいるところは谷だ。

 こんなふうに等高線を読み解いていくと、実際の地形のようすがイメージできるよね。

ポイント③ 地図記号

 地図を見やすくするために、建物や構造物などは名称ではなく「地図記号」であらわす。地図の縮尺や目的によってたくさんの種類があり、表示する記号の大きさや色、線の太さなどが定められている。

 地図記号には、時代の変化とともに形や呼び名が変わったもの、新しく生まれたもの、反対に使われなくなったものもある。いま使われている2万5千分の1地形図には、全部で134種類の地図記号があるよ!

Part2 怪しいミステリーサークルを探せ!

 下の地形図を見てみよう。印を付けた道路がきれいな円形だったり、同心円状に並んでいたりするよね。どうしてこんな珍しい形になったのかな? 下の昔の地図と比べてみると、その成り立ちがよくわかるよ。

 国土地理院のウェブサイト(この記事の下の方に詳細があるよ)にアクセスすれば、ウェブ上で全国の地形図(地理院地図)を見ることができる。キミの住んでいる町の地形図を検索して、気になる地形を探してみるのもおもしろそう!

●千葉県船橋市 2021(令和3)年

出典:国土地理院 数値地図「船橋」をもとに加工

●千葉県船橋市 1917(大正7)年

出典:国土地理院2万5千分の1地形図「船橋」(1917年)もとに加工

きれいな円形状の道路に囲まれたエリアは、大正時代につくられた海軍無線電信所船橋送信所の跡地。現在、円形の中はUR団地になっている。

●神奈川県川崎市 2021(令和3)年

出典:国土地理院 数値地図「川崎」をもとに加工

●神奈川県川崎市 1906(明治39)年

出典:国土地理院2万5千分の1地形図「溝口」(1906年)をもとに加工

印を付けた道路は完全な円ではなく、東側がちょっとデコボコしている。ここは昔、多摩川の流路が蛇行していた跡だ。また円の南西には用水路があり、それに沿って道がカーブしている。

●静岡県藤枝市 2021(令和3)年 

出典:国土地理院 数値地図「焼津」をもとに加工

●静岡県藤枝市 1889(明治22)年

出典:国土地理院2万5千分の1地形図「藤枝町」「青嶋村」(各1889年)をもとに加工

同心円状に何本も道路が走る地形は全国でも珍しい。円の中心には城跡の地図記号がある。昔、ここには田中城があり、本丸を中心に同心円状に堀を巡らして城下町が形成された。現在、城の跡地には小学校がある。

地図加工作成/今和泉 隆行

Part3 ウェブ地図でレア地図記号をハンティング!

 国土地理院のウェブ地図(地理院地図)を使って、地図記号のクイズに挑戦しよう! まずは地図記号のおさらいからスタート!

Q1 下の①~④は、特定の場所や地域で見られるちょっと珍しい地図記号だ。何をあらわす記号かわかるかな? ヒントも参考に考えてみよう。

① ヒント:自然エネルギーで電気をつくるよ。

② ヒント:温暖な地方の街路樹でもおなじみ。

③ ヒント:形は記念碑に似ているけど…。

④ ヒント:煙が出てるけど温泉じゃないよ。

Q2 Q1の地図記号は、地理院地図のどこに記されているかな? ウェブ地図上で探してみよう! 

↓国土地理院のウェブサイトにアクセス!

【検索のしかた】
地理院地図のページ上側にある検索窓に地名やキーワードを入れると、その場所の地形図が表示される。左下のスケールで縮小・拡大したり、ドラッグで位置を変えたりしてみよう。左上の「地図」アイコンをクリックすると、標準地図、淡色地図、写真など地図の種類を変えることもできるよ。

[ヒント]
①この施設は海沿いや山上、洋上に多い。
②南国の観光地といえば?
③過去に自然災害の起こった場所。
④近年、噴火した火山を調べてみよう。

[クイズの答え合わせ]

Q1 ※カッコ内は記号の由来など。
①風車(風力発電の風車)
②ヤシ科樹林(ヤシの樹形と影)
③自然災害伝承碑(石碑の形と影、縦線は碑文。令和元年に新しく生まれた)
④噴火口・噴気口(火口と火口からの煙)

Q2
①大型の風力発電所には風車の記号がたくさん並んでいる。風力発電の導入量が多い都道府県(2021年)は、1位青森県、2位秋田県、3位北海道。

②千葉県館山市、和歌山県太地町、宮崎県の日南海岸、沖縄県の宮古島など。市街地にあるヤシの街路樹は表示されないこともある。気候が温暖な地域の海岸近くなどを探してみよう。

③自然災害伝承碑は、その地で起こった洪水や地震、土砂災害などの様子や教訓を石碑やモニュメントに刻み後世に伝えるもの。国土地理院では全国547都市1900基を公開している(2023年5月現在)。

④鹿児島県の桜島、北海道の有珠山、神奈川県の箱根山、伊豆大島の三原山、小笠原諸島の西之島など。どれも噴火警戒レベルにある火山だ。

戸村悦子 著者の記事一覧

フリーライター。『子供の科学』をはじめ児童教育や科学分野、趣味の雑誌・専門書籍を中心に取材・執筆を行う。

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