「子供の科学」2023年4月号の記事「追跡! 進化する段ボール」をさらに深ボリしていくこのコーナー。今回は、本誌で紹介しきれなかった段ボールの「得意ワザ」や、進化系パッケージ包装のしくみをもっとくわしく紹介するよ! 最後に「おもしろ段ボールクイズ」もあるから、おさらいもかねて挑戦してみよう!
Part1 段ボールにはいろんな得意ワザがある!
段ボールって、とっても身近なものだけど、キミはまだ本当の実力を知らないかも!? 軽くて丈夫なつくりのヒミツや驚きの機能性など、おさらいしながらいろんな得意ワザを紹介するよ!
得意ワザ① 何度も生まれ変われる!
段ボールは何からつくられるか知ってるかな? じつは段ボールの原料は、そのほとんどが使い終わった段ボール。家庭やお店、工場などから出た段ボール古紙を回収し、工場で再生して新しい段ボールがつくられているんだ。
日本の段ボール古紙のリサイクル率は、なんと90%以上! キミがきちんと分別して回収に出した段ボールも新しい段ボールに生まれ変わって、使い終わるとまた資源として回収される。こうしてリサイクルを繰り返して何度も生まれ変わるんだよ。
得意ワザ② 強さのひみつはナゾの「三角形」
ふつうの段ボールは3層になっていて、2枚のボール紙(ライナ)の間に波形の段がついたボール紙(中しん)がはさまれている(写真1)。この波形の断面を見ると三角形になっているよね(図1)。じつは、これが強さのひみつ。こんなふうに三角形を組み合わせた形にすることで力がうまく分散されるから、とっても丈夫なんだ。このしくみを「トラス構造」といって、橋や東京スカイツリーなどの建造物にも多く利用されているぞ。
得意ワザ③ ビックリ!すごい機能性いろいろ
段ボールを使う目的は、ものを入れたり運んだりするだけじゃない。最近では使う目的に合わせて、さまざまな加工を施した進化系段ボールが登場している。段ボールの常識をくつがえす高機能にビックリだ。
例えば、ふつうの段ボールに比べて燃えにくい「防炎段ボール」(写真2)は、重要文書などの保存にぴったり。水をはじく素材をコーティングした「耐水段ボール」は、発泡スチロールの代わりに使えてリサイクルできる。頑丈な「複両面段ボール」で組み立てた運送用パレットは、木材より軽くてリサイクルも簡単だ。
★いろいろな機能性段ボールを見てみよう!(レンゴー株式会社ホームページ)
https://www.rengo.co.jp/products/functional.html
得意ワザ④ いろんな形に変身できる
段ボールは紙でできているから、折ったり、切ったり、組み立てたりする加工もラクラク。中に入れるもののサイズや用途によってピッタリの形にすることができる。割れやすいボトル(写真3)やパソコンなどの精密機器をがっちりガードするクッション材としても活躍しているよ。
得意ワザ⑤ おしゃれなディスプレイに早変わり
スーパーやコンビニでは、よく商品を段ボールケースに入れたまま陳列しているよね(写真4、5)。段ボールの印刷は手軽で自由にできちゃうから、みんなの目をひくディスプレイとしても大活躍! 使い終わったら全部リサイクルできるから、お店から出るゴミを減らすことができる。
Part2 四角い箱だけじゃない! パッケージ包装の大革命
段ボールって、四角い箱型のものばかりじゃないよね。手で簡単に開けられる通販のパッケージとか、スーパーでよく見かける野菜や果物の段ボールケースはどうやってつくられているのかな? 最先端のパッケージシステムのしくみを見てみよう!
■通販パッケージ
手で切れ目を引っ張るだけで簡単に開けられる通販のパッケージ。『子供の科学』の単行本『猛毒をもつ危険生物』が包装される工程を見ていこう!
この巨大なマシン(通販パッケージングシステム)で包装していくよ。
工程① 段ボールシートに本を載せ、センサーでサイズを計測してビニールで固定する。
工程② 両サイドを折り込んだあと、天面の段ボールシートをのせる。両端にある三角形の切れ目がポイント!
工程③ 天面シートの両サイドを折り込み、のりづけして箱状にする。
工程④ それぞれ中身の高さに合わせてピッタリ包装できた。
■ロックトレイ
お店でよく見かける、野菜や果物などを入れた段ボールケース。もとのシートの形は使う段ボールの面積がなるべく少なくてすみ、かつ組み立てやすさを考えて設計されている。
この最新マシンでどんどん組み立てていく。複雑な形をした段ボールシートが、のりづけせずに組み立てられていくよ!
工程① 切れ込みの入った段ボールシートに折り目をつけ、上からプレスして箱状に組み立てる。のりもテープも使わないから、バラして回収に出す作業も簡単。
工程② 下の写真で広がっている段ボールシートが、あっという間にトレイ(写真上)に大変身!
Part3 段ボールマンに挑戦! おもしろ段ボールクイズ
最後は段ボールマンから、おもしろ段ボールクイズを出題するよ。「子供の科学」2023年4月号の記事を読んでくれたキミには楽勝かも!?
Q1 段ボールが発明された国は?
A.アメリカ B.イギリス C.日本
Q2 段ボールの中しんの波形(段)のことを英語で何という?
A.フルート B.ドラム C.ピアノ
Q3 段ボール原紙を貼り合わせる「のり」の原料はなに?
A.お米 B.ジャガイモ C.トウモロコシ
Q4 段ボールには表と裏があるよ。表面はどっち?
A.線がついているほう B.線がついていないほう
Q5 次のうち、本当にある段ボールはどれ?(複数回答)
A.燃えにくい防炎段ボール
B.水をはじく耐水段ボール
C.ウイルスの数を減らす抗ウイルス段ボール
D.静電気を防ぐ導電性段ボール
E.段ボールのエアダクト
Q6 段ボールのリサイクル率はどのくらい?
A.20% B.50% C.90%以上
Q7 日本でいちばん多く段ボールが使われている業種は?
A.青果物 B.加工食品・飲料 C.電気・機械 D.通販 E.宅配・引っ越し
<クイズの答えと解説>
A1 B.イギリス
19世紀のイギリスで、波状に折った厚紙をシルクハットの内側に使ったのが段ボールの始まり。その後、アメリカで片面段ボールがつくられ、壊れやすいビンや電球などの包装に使われた。日本では明治時代に井上貞治郎氏(レンゴー株式会社の創業者)が厚紙を貼り合わせた段ボールの製造に成功し、「段ボール」と名づけた。
A2 A.フルート
フルートのつづりは楽器のフルート(flute)とまったく同じだよ。
A3 B.線がついていないほう
段ボールシートをつくるとき、中しんを裏ライナの原紙と貼り合わせる工程で波形の頂部に沿って線(筋)がつく。そっちが段ボールの裏面、反対の面が表面になる。
A4 C.トウモロコシ
のりの原料は、トウモロコシからつくられるデンプンの「コーンスターチ」。植物由来の成分だから、段ボール古紙の再生にほとんど影響しない。
A5 ABCDE全部
Cの抗ウイルス段ボールは、抗ウイルス剤を塗って特定ウイルスの数を減少させる。Dの導電性段ボールは、電気を通しやすい薬剤を塗って静電気の帯電を減らすもので、電子部品のケースなどに使われる。Eの段ボールにアルミ箔を貼ったエアダクトは、実際にビルや工場などでも使われているぞ。
A6 C.90%以上
日本の段ボール古紙の回収率は全体で約95%。そのうちの90%以上が新しい段ボールとして生まれ変わる。日本では平均すると7~8回も再生されているそうだよ。
A7 B.加工食品・飲料
加工食品や飲料缶ボトルなどの包装に使われるのは全体の約41%でダントツ。ちなみに2位は青果物で10%、3位は電気・機械で8%。最近では通販や宅配での使用も増えている。
(取材協力/レンゴー株式会社)
文
(撮影/青柳敏史)
(イラスト/イケウチリリー・新保基恵)