「子供の科学」2022年7月号の「教えてセンパイ!」で訪れたのは、東京工業大学附属科学技術高等学校マイコン制御部(以下、東工大附属高校マイコン制御部)。取材したのは、ちょうど「高校生パフォーマンスロボット競技大会」のエントリー締め切りが間近に迫るタイミングでした。通常だと、出場校が会場に介して大会が開かれるのですが、今年は自作ロボットのパフォーマンス動画を提出し、審査を受けます。東工大附属高校マイコン制御部は毎年優勝を果たしている強豪校ですが、昨年は新型コロナウイルスの影響で、そもそも出場自体が叶わず、連続優勝記録が途絶えることに…。今年はそのリベンジを果たそうと、部から5チームが出場する予定で、作品の制作風景を本誌で紹介しました。そ・し・て…、取材日以降、見事、優勝したとの報告が! 強さの秘密はどこにあるのか? 深掘りしてみましょう!
「高校生パフォーマンスロボット競技会」ってどんな大会?
今回、東工大附属高校マイコン制御部が出場する「高校生パフォーマンスロボット競技会」は、「創造とリサイクル」をテーマとした大会。そのテーマの通り、廃材などを使ってロボットを作るのですが、出場するロボットの世界観や動きがユニークだと、数ある高校ロボコンの中でも毎回話題となる大会です。
出場するロボットは、搭載のセンサで床のラインを読み取り、規定のラインに沿って走るライントレースをしながら、パフォーマンスを行います。途中、決められた地点や区間でロボットがパフォーマンスをすると加点され、そのパフォーマンスのポイント+審査員の点の合計得点で、チームは競い合うことに。スタートからゴールまでに与えられた時間は2分30秒で、早くても遅くても減点されるので、ぴったりでゴールしないといけない…そんな決まりもあります。
完成目前! 部員たちが自作したユニークなロボット
取材した当日、東工大附属高校マイコン制御部の部室では、ほとんどのチームがロボット制作の最終段階にありました。
あるチームはカエルのロボットを製作中。途中、カエルのロボットがハエの装置に近づくと、超音波センサが反応し、ハエがパタンと倒れ、“カエルはハエを食べた”というストーリーです。実際に取材班がハエの装置に手を近づけてみると、ハエがパタリ。思わず「おおおおおおお!」とどよめきが。何回近づけてもきれいに倒れ、逆に離れるとすくっと起き上がりました。
また、「浦芝太郎(高校の所在地が芝浦なので、浦島と芝浦を反対にした浦芝をかけた名前)」のテーマでカメのロボットと竜宮城の装置を制作している別のチームは、同じように超音波センサを使い、カメが竜宮城に近づくと、カメの背中から裏芝太郎が飛び出すしくみを制作。浦芝太郎がぴょこりと飛び出す瞬間は取材班もドキドキ!
聞けば、どんなロボットをつくるのか?の構想段階から、製作に至るまですべてのプロセスを部員たちがチームで話あって、制作を進めているとか。各チーム、技術的な面はもちろん、背景のストーリーまで創造的で練られているのは、さすが! 東工大附属高校マイコン制御部が毎回、入賞を果たす理由がわかりました。
顧問の先生がロボット制作に関わらない理由
さて、この強豪を率いる顧問の石川先生ですが「自分はロボット制作にはほとんど関わらない」と言います。実際にすべてのチームは、先輩と後輩の混合チームでつくられており、わからないことはすべて先輩に聞いて、解決する環境です。リアルに「教えてセンパイ!」というわけですね。これには、石川先生のある狙いがあります。
石川先生「まず、生徒たちがわからないことにぶつかったら、自分たちで調べて解決する癖を身につけてほしいんです。ロボット制作を通して自力で解決する気持ちよさを知ってほしい。また、将来、彼らが社会に出たときにどんな仕事に就くとしても、基本的にはチーム単位で進めていくことになるかと思います。そのときに自分には何ができて、何ができないかを見極め、できないことはチームの別の人間に頼りながらともに解決していく。そういったチームワークを身につけてほしいと考えています」。
先輩が後輩へと技術を継承する、先輩は後輩に教えることで自らの技術をさらに深める、お互いの得意を生かせる、こんなところにも強豪の強豪たる所以を見た今回の取材。科学の探求は1人でも楽しいものですが、仲間がいるともっと深まる!もっと楽しい!を実感しました。今回は東工大附属高校マイコン制御部を紹介しましたが、本誌連載(最新の「教えてセンパイ!」は、2022年7月号掲載。奇数月に掲載しています)では、これからも科学に深い関わりのある学校を紹介していきます。ぜひ、チェックしてくださいね!
取材・文
コカネットプレミアム(DX)会員は、雑誌『子供の科学』バックナンバー電子版が読み放題! 以下をクリック☆