「子供の科学」2022年3月号の記事「記憶術をやってみよう」をさらに深ボリしていくこのコーナー。前回は、メモリースポーツの歴史や競技種目などを紹介したよね。続編の今回は、メモリースポーツをするのに必要な「記憶術」の基本テクニックをおさらいしつつ、“記憶王”青木健さんに、花形競技である「トランプ記憶」の練習法を教えてもらいます!
【4/3(日)開催オンライン講演会】記憶力日本チャンピオンが教える「覚えることが楽しくなる記憶術」
Part1 記憶術の基本テクニック
メモリーアスリートの記憶術
記憶術には数多くのテクニックがあり、練習すれば誰でもできるようになります。もちろんメモリースポーツの選手たちも、大量の数字やトランプの並びをそのまま覚えているわけではありません。さまざまな記憶術を駆使
して超人的
なプレイをしているのです。
記憶術をマスターすれば大量のものを超スピードで覚えることができて、忘れにくくなります。英単語や歴史の年号など「暗記ものが苦手……」という人でも大丈夫。学校のテスト勉強や資格試験などにも大いに役立ちますよ!
たくさんある記憶術の中でも、二大メジャーといわれる基本テクニックが「ストーリー法」と「場所法」。本誌でも紹介していますが、簡単におさらいしておきましょう。
記憶術その1「ストーリー法」
ストーリー法は、その名のとおり覚えるものを使ってストーリーをつくり記憶する方法です。単語や文字そのもので覚えるのではなく、その単語から覚えやすいものをイメージしてストーリーをつくっていきます。ストーリーは意味のないもので構いません。むしろ現実ではあり得ないようなハチャメチャなストーリーの方が、強く記憶に残りやすいのです。
ストーリー法のコツは、何か自分の好きなものにイメージを置き換
えてストーリーをつくることです。ここに、本誌とは別の内容の練習問題を用意しました。1位から5位を順番にどれくらい覚えられるか、挑戦してみましょう。
●練習問題
・用意するもの
えんぴつ、用紙、タイマー(キッチンタイマーやストップウォッチでもOK)
・やり方
①タイマーをセットして、制限時間内に問題にあるものを全部覚える。
②問題を見ないようにして順番に思い出し、紙に書き出して確認する。
★世界の人口の多い国トップ5を覚えよう。【制限時間30秒】
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
中国 | インド | アメリカ | インドネシア | パキスタン |
参考:国連人口基金「世界人口白書2021」
この記事の最後にストーリーの例を載
せていますので、自分でやってみた後で参考にしてみてください。
記憶術その2「場所法」
場所法は身近な場所に覚えるものを置いていく方法で、メモリースポーツには欠かすことのできない「最強の記憶術」です。これを使えば短時間に大量のものを覚えられるようになります。
場所法を使うには、①身近な場所をどこにするか? ②その場所のどこに、どの順番で置くか? ということを先に決めておく必要があります。これが「場所づくり」です。本誌でも、家の間取りを例に説明しましたね。
場所の大きなくくりを「ルート」、ドアや玄関
など1つ1つの場所を「プレイス」といいます。プレイスをつくるときは、時計回りや反時計回りのようにルートをひとつながりにするのがコツです。そして、覚えるものをプレイスに順番に置いていきます。そこからストーリー法でハチャメチャな話をつくると、より記憶に残りやすくなります。
覚えたものを思い出すときは、プレイスを順番にたどって思い出していきます。練習すれば、100プレイスぐらいまで増やすことができて、効率が上がりますよ。
私が主宰
するBrain Sports Academy(BSA)でも解説動画を多数アップしているので、ぜひチェックしてみてください
●BSA「記憶術講座初級コース(ストーリー法)」(講師:平田直也先生)
●BSA「記憶術講座初級コース(場所法)」(講師:平田直也先生)
Part2 「トランプ記憶」に挑戦!
「トランプ記憶」で記憶力トレーニング
トランプ記憶はスピードカードとも呼ばれ、メモリースポーツの花形種目です。前回の「めざせ!メモリーアスリート① メモリースポーツを始めよう」でも触れましたね。
トランプ記憶は、ジョーカーを除く52枚のトランプをシャッフルし、その順番をいかに速く正確に覚えるかを競う競技です。トランプ記憶をやると、いろいろな記憶術の基礎が身につきます。トランプのマークや数字という抽象的
なものをイメージ(絵)に変換
してストーリーをつくる技術、場所に置く技術、覚えるスピードや精度が劇的にアップします。
記憶力は、筋力トレーニングと同じように継続して練習しないと低下していきます。でも、場所法の練習で毎回違った単語をたくさん用意するのは大変だし、すぐ飽
きちゃいそうですよね。一方、トランプ記憶はトランプ2パックがあれば場所を選ばす、ちょっとした空き時間でも練習できるのがメリット。52枚全部を覚える、少しずつタイムを縮めていくというふうに、毎回目標を決めてやるとゲーム感覚で楽しめるし、クリアするたびにテンションが上がりますよ!
トランプ52枚の並びを覚えるには?
それでは、トランプ記憶のやり方を順番に説明していきましょう。まずトランプ2パック(記憶用と回答用)と、時間を計るタイマーを用意してください。トランプは百円ショップのもので構いませんが、記憶用と回答用を区別するために、できれば赤と青など色の違
うものを用意するとよいでしょう。
トランプ記憶では、カードに描
かれたマークと数字をそのまま覚えるわけではありません。♥◆♠♣4つのマーク×1~13の数字=52個を、具体的なイメージに置き換えて記憶していきます。例として、下の「イメージ変換表」のように、まず語呂
合わせで単語をつくり、そこからイメージを連想します。変換表が自分のイメージに合わない場合は、覚えやすいようにカスタマイズしてください。
♥ハート(は) | ◆ダイヤ(だ・た) | ♠スペード(す) | ♣クラブ(く) | |
1(い) | 灰皿 | たいやき | すいか | クイズ |
2(に) | はにわ | ダニ | スニーカー | 国 |
3(さ・み) | はさみ | ダンサー | 炭火 | 草 |
4(し) | はし | だし巻き | 寿司 | 串 カツ |
5(ご・こ) | 羽子板 | だんご | スコップ | 黒ごま |
6(む・ろ) | ハム | ダム | スロット | 黒豆 |
7(な) | 花火 | 棚 | 砂 | クイナ |
8(は・や) | ハヤシライス | タッパー | スーパー | クッパ |
9(く) | 白鳥 | たくあん | スクーター | 九九 |
10(と・じ) | ハト | タジン鍋 | ストロー | くじ |
11(り) | 針 | ダリア | すり鉢 | クリ |
12(きゅ) | 白球 | 卓球 | スキューバダイビング | 肉球 |
13(き・ぎ) | おはぎ | 焚 き火 | スキー | クッキー |
イメージ52個の順番を覚えるには、場所法を使います。1プレイスに1つのイメージを置くと52個のプレイスが必要になります。そこでおすすめは、1プレイスに2つのイメージを置いていく方法。これなら半分の26プレイスあれば記憶できます。その場合、同じプレイスに置いた2イメージの前後関係を覚えるために、ストーリー法を使います。
トランプ記憶の手順をまとめると、次のようになります。
①トランプを見る
②変換表で単語→イメージに置き換える
③イメージからストーリーをつくる
④プレイスにそのイメージを置く
トランプ記憶をやってみよう!
では、実際にトランプ記憶をやってみましょう。まずトランプ52枚をよくシャッフルします。2枚のトランプを見て、ストーリー法と場所法を使って1プレイスに2イメージを置きます。
①1枚目と2枚目のトランプは「♥4・♠7」
②♥4→はし・♠7→砂時計のイメージに変換
③ストーリーをつくる→はしで砂時計をつまむ
④1つ目のプレイスに③のイメージを置く
これで1プレイス目の記憶が終わりました。次のトランプが「◆1→たい焼き、♣3→草」なら、「たい焼きを割ったら草が出てきた!」などとイメージして2つ目のプレイスに置きます。こうして26回繰
り返せば、52枚すべてを記憶することができます。
ただし、最初から52枚のイメージを記憶するのはハードルが高いので、まずはどれか1つのマーク13枚で練習するのがおすすめ。はじめは変換表を見ながらやっても構いません。慣れてきたら少しずつ枚数を増やして、26枚、39枚……とレベルアップしていきます。
トランプを記憶したら、いよいよ順番を再現(アウトプット)していきます。もう1組のトランプを取り出しやすいように、手元に横並びに広げてスタンバイ。1つ目のプレイスにあったものを思い出して、正解のトランプを選びます。コツはわからない部分は飛ばして、わかる部分からどんどん答えていくこと。あとで残ったトランプがどこに入るか考えて、空いているプレイスに当てはめていきます。
こうして最終的に、記憶したトランプと同じ並びのトランプがもう1組できていれば大成功! 練習すればどんどんタイムが縮まっていくので、きっと病みつきになりますよ。BSAではトランプ記憶のコツなどを解説した動画もアップしています。そちらも参考にして、まずは制限時間5分の壁
を突破
できるようがんばってください!
●BSA「トランプ記憶のコツ」
4/3(日)のオンライン講演会では、年号を例に、普段の生活でも役立つ記憶術をわかりやすく解説! この記事の内容がちょっと難しかったという人も、丁寧に説明していくので安心して参加してみてください。質問もお待ちしています。申込みはこちらから!
★練習問題のストーリー例。それぞれの国から、こんな単語をイメージ。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
中国 | インド | アメリカ | インドネシア | パキスタン |
パンダ | カレー | ハンバーガー | ナシゴレン | パキッ、ストン |
ストーリーの例。パンダがカレーを食べていたらハンバーガーが飛んできた。それを見ながらナシゴレンを食べようとしたら、持っていたスプーンがパキッと折れてストンと落っこちた!
文
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