2022年3月号の『子供の科学』では、メモリースポーツで日本チャンピオンに輝
いた経歴をもつ青木健さんが登場し、「記憶術
」についてレクチャーしてくれた。ここでは、誌面では紹介しきれなかった、メモリースポーツの競技としての魅力
を存分に紹介
していくよ。また、実際に挑戦
してみたいキミに向けて、“記憶王”青木さんがメモリースポーツの始め方をコーチング。キミの才能を開花させよう!
【4/3(日)開催オンライン講演会】記憶力日本チャンピオンが教える「覚えることが楽しくなる記憶術」
Part 1 メモリースポーツってどんなもの?
メモリースポーツはどんな競技?
メモリースポーツとは、トレーニングによって高めた記憶力を一定のルールのもとで競い合う競技です。囲碁
やチェス、eスポーツのように、肉体だけでなく頭脳をフル回転させて競うマインドスポーツ(頭脳スポーツ)の一種で、競技のプレイヤーは「メモリーアスリート」と呼ばれています。
メモリースポーツは年齢
、性別、体格、ハンディキャップの有無などによる区分がほとんどなく、大人も子供も一緒
に楽しめるところに面白さがあります。身体を使うスポーツのようにケガをする心配もなく、高いお金をかけて用具を揃
える必要もありません。
実際に、2018年の世界チャンピオンは、筋ジストロフィーという障がいのあるドイツ人選手でした(写真下)。もちろん親子で同じ大会に出場することもできるし、小中学生が大人を打ち負かして優勝するチャンスだってあるのです!
メモリースポーツの発祥はどこ?
メモリースポーツの発祥
はイギリス。1991年に第1回世界記憶力選手権(ロンドン)が開催
されて以来、世界40カ国以上でさまざまな大会が行われています。当初はイギリスを中心にヨーロッパで盛んでしたが、近年はアジアの国と地域にも広まり、世界の競技人口は1000万人を超えるともいわれています。
なかでも競技人口が多く、次々に世界チャンピオンを輩出
している強豪国
としては、モンゴル、中国、ドイツ、インドネシアなどが常連で、もちろん日本もその一角を占
めています。特にモンゴルや中国は、国をあげてメモリーアスリートの育成に力を入れており、国際大会でメダルを獲得
した選手が国民的スターになることも珍
しくありません。まさにオリンピック・パラリンピック大会の金メダリストのようですね!
メモリースポーツにはいくつもの競技団体があり、世界記憶力選手権のほかにもさまざまな形式の大会が各国で開かれています。日本では2014年に日本メモリースポーツ協会(JMSC)が設立され、はじめて国際基準にのっとった記憶力選手権(東京)が開催されました。近年は競技の普及
にともない、国内でもメモリースポーツのクラブ・チームや大学サークルなどが続々と誕生しています。
Part 2 メモリースポーツの競技種目
どんな競技種目があるの?
メモリースポーツの競技種目や対戦形式は、それぞれの大会によって異なります。世界大会には主に5種目と10種目の競技があり、プレイヤーが1対1の対戦形式でバトルを繰
り広げるものから、総合得点で競うもの、団体チーム戦までさまざまです。
通常は試合会場に観客を入れて対面で行われ、スリリングな競技の様子は解説付きで世界中にライブ配信されます(2022年2月現在、新型コロナウイルスの影響
により大会中止、または無観客のオンライン形式で開催されている)。
また、10種競技の年齢区分については、世界共通ルールで次のように決まっています。
・キッズ……12歳以下
・ジュニア……13~17歳
・アダルト……18~59歳
・シニア……60歳以上
ただし、オンライン形式の場合は参加者の年齢は関係なし。がんばれば、キミが次の世界チャンピオンになるのも夢じゃないかもしれません!
花形は「トランプ記憶」
メモリースポーツにはさまざまな種目があります。代表的なのは、数字、単語、年号、人の顔と名前、トランプの並びなどを記憶するもので、記憶時間・回答時間は大会によって異なります。記憶時間は最も短い大会で1分、最も長い大会では1時間も記憶し続けるため、かなりの集中力が必要です。
では、実際にメモリースポーツの大会で行われる主な種目について紹介しましょう。
・スピードカード……シャッフルしたトランプ(ジョーカーを除く52枚)の並びをどれだけ速く覚えられるかを競う。SCC(スピードカードチャレンジ:Speed Cards Challenge)はスピードカード1種目の大会で、初心者から上級者まで参加しやすく人気がある。
・5種競技……数字、単語、トランプ(スピードカード)、歴史の年号、顔と名前など、5種目をバトル形式で競う。日本ではこれが一番人気で、プレイヤーの数も多い。
・10種競技……顔と名前、単語、2進数、年号、スピードナンバー、トランプ(ランダムカード)など、10種目の合計ポイントなどで競う。
メモリースポーツのなかで最も人気のある「花形種目」は、なんと言っても「トランプ記憶」でしょう。「スピードカード」(写真下)では、記憶・回答に与
えられた制限時間は共に5分ですが、トップ選手になるとものの数十秒で全クリア! 世界記録は15.61秒ですから、なんと1秒間に3.3枚を記憶していることになります。陸上競技に例えれば100m走のイメージですね!
トランプ記憶には、10分、30分、60分といった制限時間内に、できるだけ多くのトランプの並びを覚える「ランダムカード」という種目もあります。ちなみに世界記録は60分で1776枚(約34パック)という超人的
なものですから、こちらは42.195kmのフルマラソンといった感じでしょうか?
トップ選手たちの磨
き抜
かれた記憶力とテクニックは、文字や写真だけではお伝えしきれません。インターネット上には大会の配信映像などがたくさんアップされているので、ぜひそちらもチェックして競技のスピード感を体験してみてください。
Part 3 メモリースポーツの始め方
メモリースポーツを始める3ステップ
ここまでメモリースポーツの競技種目などについて解説しました。では、実際にメモリースポーツをやってみたいと思った人はどうすればよいのか? ここからは、メモリースポーツを始めるための3ステップを紹介していきましょう。
Step1 まずは準備!
用意するものは、トランプ2パック(記憶用と回答用)とタイマーだけ。時間を計測するタイマーはキッチンタイマーやストップウオッチでもOK。トランプは100円ショップに売っているものでも構いません。上達したら、道具をアップグレードしてもよいでしょう(写真下)。
Step2 記憶術を学ぶ!
YouTubeを見たり、本を読んだりして「記憶術」を身につけます。メモリースポーツでは、大量の数字やトランプの並びなどをそのまま覚えるわけではありません。記憶術とは、大量のものを短時間で記憶するもので、さまざまなテクニックがあります。なかでも「ストーリー法」と「場所法」は2大メジャー記憶術といわれる基本テクニック。単語や数字など抽象的
なものをイメージ(絵)に置き換
えてストーリーを作ったり、そのイメージを決めた場所に順番に置いたりして覚えるものです。
これら記憶術の基本テクニックやトレーニングの仕方については次回、さらに深ボリしてご紹介します。
Step3 ひたすら練習!
スポーツでも楽器の演奏でも、上手くなるためにはたくさんの練習が必要ですよね。それと同じように、メモリースポーツの大会に出るほどの技術を身につけるには、やはり相応のトレーニングが必要です。そこでオススメなのが「トランプ記憶」。Part2でもご紹介した、シャッフルしたトランプの並びを覚えるものです。
トランプ記憶をやると、効率よく記憶術の基礎
を身につけることができます。トランプ2パックがあればどこでも練習できるし、ゲーム感覚で楽しみながらできるのが最大のメリット。ゲームを攻略
するように、トランプ52枚をすべて覚えられたときの爽快感
・達成感はたまりません!
「トランプ記憶」上達のコツは?
トランプ記憶をマスターするには、とにかく毎日コツコツ練習をすることが大事。1日10分ずつでもトレーニングを続ければ、2~3カ月後には5分間で52枚のカードを全部覚えられるようになります。
トランプ52枚を覚えることができたら、あとは5分、4分、3分……とタイムを縮めていきましょう。毎回タイムを計って友達と競争したり、みんなの前でスピードカードを披露
したりすると、トレーニングのモチベーションが上がりますよ!
さて、ここまでクリアできれば、キミもメモリーアスリートの仲間入り。腕試
しをしたくなったら、オンラインで記憶力の対戦ができる「Memory League(メモリーリーグ)」(下記)に登録して、仲間と一緒に記憶の限界に挑戦してみましょう!
「メモリースポーツ」関連サイトURL
●日本メモリースポーツ協会(JMSC)公式サイト
https://www.jmsc.info/
●Brain Sports Academy(BSA)公式サイト
https://brainsportsacademy.net/
●「Memory League(メモリーリーグ)」
https://memoryleague.com/#!/home
めざせ! メモリー・アスリート②「記憶術を使って、『トランプ記憶』に挑戦しよう!」
文
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