YouTubeの「子供の科学チャンネル」では、雑誌
の記事で紹介
した実験
や工作などの動画を紹介しているよ。その中にある、「不思議
!小麦粉
が大爆発
!」という動画を見たことがあるかな。
ここで爆発しているのは小麦粉なんだ。なぜ小麦粉が爆発したんだろう? この記事ではその不思議を解明
してくぞ!
1 燃えるってどういうこと?
燃
えるもの…といって思いつくのは、ガソリンとか紙などのような、炎
を近づけると燃え出す“もの”だよね。まさか「こむぎこっ!」って答える人はいないと思う。でも、実は小麦粉って爆発するように激
しく燃えるぞ…というのが今回の実験なんだ。
試しに小麦粉に電子
着火器
(「チャッカマン」など)の炎を近づけても、焦
げることはあってもぼうぼう燃え出すことはない。激しく燃やすにはちょっとした工夫が必要だ。
そもそも「燃える(燃焼
)」とは、「燃えるもの(燃料
)」が「高い温度」になって「酸素
」と結
びつく現象
。ゆっくり燃えれば燃焼だし、いっぺんに激しく燃えれば爆発という言い方をする。紙などにマッチやライターの炎を近づけると、紙などが燃料になり炎の熱で温度が上昇
、空気中の酸素と結びついて燃焼が始まるわけ。この「燃料」「温度」「酸素」が燃えるための3条件だ。どれかが欠
けると燃えないいっぽうで、どれかの条件が増えると燃焼ははげしくなる。
そこで今回の実験では、あまりよく燃えない小麦粉を燃料にして、温度はふつうのロウソクの炎だけど、酸素とよく混ぜることで爆発的な燃焼を起こさせる。細かい粉
のことを粉
じんというけど、この粉じんが爆発的に燃える…「粉じん爆発」という呼
び名もある実験だ。
2 小麦粉を爆発させる実験をやってみよう
それでは、小麦粉を爆発させる実験をやってみよう。
2.1 用意するもの
① 小麦粉
② ろうと(直径7~10cmぐらいのもの)
③ ビニールホース(ろうとがはまる太さ)
④ 透明
ビニール袋
(40リットル前後が扱
いやすい)
⑤ 自在
針金
(アルミ針金)
⑥ バーナー用三脚
⑦ 三脚架
⑧ ロウソク
⑨ 手鍋
(小麦粉をから煎
りする)
⑩ スプーン
チャッカマン、ガスコンロなど。
2.2 実験の進め方
《注意》
必ず大人の人と一緒に実験を行いましょう。
● 実験の準備
まずは、実験をするための準備
をはじめよう。
① あらかじめ市販
の小麦粉スプーン4~5杯
を、鍋
に入れてよくまぜながら「から煎り」する(熱を加える)。少し温めていると水蒸気
が出てくるが、出方
が弱まったらOK。
《注意》
小麦粉はごくわずかに黄色くなる。加熱
しすぎると焦
げてしまう。
② ろうとにビニールホースをつなぎ、三脚にセットした三脚架の中をとおす。
《注意》
安全のために炎からじゅうぶんに離
れて実験できるよう、ホースは2m以上の長さのものを使用しよう。
③ 三脚には1~2カ所にロウソクを立てておく。ロウソクの根もとを加熱して溶
かし、三脚にくっつけるといい。
④ ろうとに、①でから煎りした小麦粉をスプーン2~3杯ほど入れる。
⑤ 針金をL字型に曲
げたものを、周囲
に3~4カ所立てて、透明ビニール袋をかぶせる。袋がゆるゆるになるよう(簡単
にはずれるよう)、針金の間隔
を調節
する。
● 実験
準備が終わったら、いよいよ実験をはじめよう。
《注意》
実験は、周囲に燃えるもののない場所で、火災
に十分注意して行うこと。非常用
の消火水
も用意しておこう。
また、実験直後
のビニール袋は熱でとけているので、すぐにさわると熱い状態で手にくっつくことがある。やけどをしかねないので注意しよう。
⑥ ビニール袋のすそを持ち上げて、ロウソクに着火
する。これが燃焼の火種
になる。
⑦ 袋のすそを元にもどして準備完了。ロウソクの熱でビニール袋に穴があかないように注意しよう。
⑧ ビニールホースの端
をくわえ、息を強く吹
き込
む……と、ろうとの小麦粉が袋の中に舞
い上がって……巨大な炎の塊
が発生、宙
に舞い上がる。
[ポイント]
息を吹き込むとき、「うふ~っ」という感じではなく、「ぷふーっ!」と勢
いよく吹くこと。小麦粉を一気に舞い上がらせるのがポイントだ。
実験の動画をもう一度見てみよう。
《注意》
この動画では撮影
の都合で近い距離
で実験しています。実際に行うときは長いホースを使い、2m以上離
れたところで実験して下さい。
3 なぜ小麦粉が爆発したの?(しくみの解説)
小麦粉の塊に炎を近づけると、塊の表面にある部分の小麦粉が焦げる。このとき小麦粉は、炎の熱で水分が完全に蒸発
して炭
(炭素
)になり、一部は空気中の酸素と結びついて二酸化炭素
に変化している。つまり、「ちょっとだけ燃える」わけ。でも、燃えるのはほんのわずかなので出る熱も少しだし、塊の内側
は酸素がほぼないので燃え続けることはない。炎を遠ざけると、小麦粉の燃焼はとまる(燃えなくなる)。
ところが実験でためしたように、小麦粉を息で吹き上げると、空気とよく混
ざり合う。つまり塊の表面
だけではなく、内部の細かな小麦粉ひと粒
ひと粒が、空気中の酸素と良
く触
れあう状態
になるんだ。このような状態で温度が上がれば…つまりロウソクの炎の近くにあれば、その熱で小麦粉の粒は燃えて熱を出す。
このときに燃える小麦粉の量
は、塊の表面にある小麦粉よりも多い。さらに、燃えた部分の周囲にある小麦粉の粒はみんな酸素と触れあっているので、発生した熱でまわりの小麦粉がどんどん燃えていく。いや、どんどんというより、ほぼいっぺんに「どかん!」と燃える。爆発的な燃焼だ。
これが、「燃料が粉状
になって空気と混ざり爆発する」現象
、つまり粉じん爆発のしくみなんだ。
文
(撮影/飯島裕)