子供の科学で大好評連載中の「ポケットにしのばせて遊ぶカンタン電子工作 ポケデン」の伊藤尚未先生が、80作品以上あるポケデンの中から、自由研究におすすめの装置をチョイス。おもしろい自由研究に仕上げるポイントを紹介するよ。
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自由研究のまとめ方を知ろう
電子工作だけでなく、どんな自由研究のテーマであっても、最終的にレポートとしてまとめて提出するよね。まずは、レポートとしてまとめるためのポイントから考えてみよう。
大きくは、次のようにまとめるとわかりやすい。
①テーマ設定とそのきっかけ
②研究の手法、予想、考えられること
③結果と考察
④今後の課題など
このようにいくつかのステップに分けると、読み手に内容が伝わりやすいね。
この中でも、いろいろな文献や情報にあたって調べたり、実際に実験や観察を行って結果をまとめていく②と③がメインとなる部分だが、自由研究を充実したものにするには、
●手法や装置を工夫して、何度でも実験、観察を行う
●再実施した結果をグラフ、表にまとめる
ということを何度も繰り返していくとよい。どんどん研究内容が深まって、本格的になっていくよ。
また、結果が出たからといって満足してはいけない。自由研究で大事なのは、結果ではなく、
●なぜそういう結果になったのかを自分なりに考えて書く
●他のものでやってみたらどうなるかなど発展させる
●その結果を使って、別の実験や工作に応用する
など、展開があると、さらなる新しい発見、発明につながっていくかもしれないね。
テーマ設定をどうするか
ひとつのモチーフ(物体や現象など)に対して、たくさんの切り口が考えられるから、自分のオリジナルの発想で切り口を考えて取り組むといいぞ。
たとえば「ビー玉」に興味をもって、モチーフにしたとしよう。どんな切り口が考えられるかな?
●素材
ガラスにはどんな種類があるか
ガラスに何を混ぜるとこのような色になるのか
ガラスの強度はどうか
●形状
ビー玉はどうやってつくられているのか
真球なのか? 真球かどうかを確かめるには?
他の球状のものとの比較
●使い方
いろいろな遊び方
どんな工作に使えるか
レンズとして使えないか
などなど。ビー玉の歴史を調査してもおもしろそう。自由研究だから、自由な発想で、研究テーマを設定し、切り口を深め、広げていくといいよ。
ポケデンを使った自由研究
これまで書いたまとめ方やテーマ設定の考え方を踏まえて、ポケデンでできる自由研究のヒントを紹介していこう。
ポケデンをつくって終わりではなく、そこから何を考えて、レポートとしてまとめていくかを考えよう。ぜひ、ここで紹介したことから発想して、ぜひ自分なりの切り口や手法を加えていってほしい!
また、装置がうまくできなかった、苦労してようやく完成させた、というキミは、ぜひその苦労したことや、工作をしていて気づいたこと、工夫したことをレポートにしてみよう。
●ハンダごての持ち方や角度を変えたらうまくいくようになった
●ハンダごてをあてて、離すタイミングを工夫した
●細かいところがよく見えるように、虫眼鏡付の作業台をつくった
ということでも、立派な自由研究だ。本やネットに書かれていることをそのままやって終わりの自由研究よりも、ずっと素晴らしい!
では、ここからはいくつかのポケデン作品をモチーフに、自由研究の切り口を紹介していこう。
「音と光のジッケンボックス」
ポケデン「音と光のジッケンボックス」をモチーフに、電子部品の特性や電子回路、工作の基本を考察してみよう。このポケデンはハンダ付けがいらないので、初心者でもかんたんに回路を組んで、いろいろな部品の性質を確かめることができるんだ。
1 電子回路とはなにか?
身のまわりにたくさんある家電製品、電子機器にはどんな機能があり、どんな役割、性能があるか調べてみよう。
2 電子部品の役割
ジッケンボックスでいくつか回路を組み立ててみて、回路の稼働を確認。使った電子部品の役割を調べ、回路のしくみをひも解いてみよう。
3 回路を考えてみよう
ジッケンボックスで、自分で考えて設計した回路を組み立ててみよう。成功して思い通りの稼働をしたら、さらなる回路を考えてみよう。失敗したら、なぜ失敗したのか考え、対策を練って、さらに実験してみよう。
もし、部品がこわれてしまったら、なぜこわれてしまったのかの原因を調べたり、新しい部品の入手方法を調べたりするのも自由研究だ。
4 家電製品で考える
身近な家電製品の機能は、どんな電子回路でできているのか。調べたり、考えたりして書き出してみよう。
例えば、人が通ると自動的に点灯する照明は、どんな電子回路だろうか?
どんな電子部品が必要だろうか?
人がいることをセンサーで感知して灯りをつけるには、どんなセンサーを使えばいいだろうか?
図書館やインターネットで調べてみると、ジッケンボックスの回路とのつながりも見えてくるかも。
5 課題
ジッケンボックスだけでは、人が通ったらライトがつく、というような本格的な装置まではつくれないだろう。今後どんな部品を集めて、どんな作品や装置をつくってみたいかを考えてみよう。
「キャラメルハウリンガー」
マイクや拡声器を使ってスピーカーから音を出したとき、「キーン!」「ピー!」と高い音が鳴る「ハウリング」。これをわざと鳴らしちゃうという装置が、この「キャラメルハウリンガー」だ。これを使って、音について考えてみよう。
1 ハウリングとは?
学校の朝礼などでハウリングが起きるのはなぜだろう? ハウリングとはどんな現象で、どんなときに起きるのだろう? ハウリングのしくみを調べるために、まずはキャラメルハウリンガーをつくってみる。
2 ハウリングを起こしてみる
つくった装置を使ってみると、本当にハウリングが起きた! どんな音がなったか記録。
3 改造してみる
スピーカーと圧電サウンダーをハンダ付けし直して、長いビニール線にして実験してみたらどうか。2つの部品が近いほどハウリングが起き、遠くなるとハウリングが起きないことがわかる。
4 いろいろなものに通してみる
塩ビ管や植木鉢などの両端で実験してみるとどうだろう?
5 ハウリングのしくみを調べる
そもそも音とは何なのか。音=空気の振動。空気のないところでは音が伝わらない。楽器はなんで音が鳴るのか。音について知って、ハウリングのしくみを調べてまとめてみよう。
6 課題
音について理解が深まったので、次は電子楽器や人間の発音のしくみなどについても調べてみたい。
「チョットスター」
この「チョットスター」は、部屋の天井に幻想的な星空やオーロラを映し出すプラネタリウム装置。部品数が少ないので、初心者にもつくりやすくて人気のポケデンだ。これを使って、プラネタリウムのしくみを考えてみるのもおもしろいね。
1 プラネタリウムに行く
科学館のプラネタリウムで、星が再現できることに感動。プラネタリウムはどんなしくみで、星座をスクリーンに映し出しているのだろう? 「チョットスター」の工作で再現してみる。
2 レンズについて
レンズは光の屈折を利用した拡大鏡。レンズを組み合わせることで、スクリーンへの画像投影ができる。このとき、焦点をあわせるために、レンズを複数枚使うことがある。チョットスターでは、ルーペを使って工作するが、このルーペは数cmの短焦点なので、分解すると凸レンズが2枚あった。レンズについて詳しく調べていくと、カメラのレンズならさまざまな形のレンズがたくさん組み合わされていることがわかる。
3 部屋をプラネタリウムにする
チョットスターを使って、部屋をプラネタリウムにしてみた。
これはかんたんなしくみのものだが、本物のプラネタリウムでは、地球上の位置や時間を自在に変えることができて、まるで本当に夜空の星座を見ているように感じられる。季節や天候に左右されずに、星空観察を楽しめる素晴らしい装置だ。
4 課題
星座のおもしろさを伝えるために、プラネタリウムをもっと楽しくする方法を考えて、装置をつくってみたい。
「ランタナカレイド」
「ランタナカレイド」は、細長い台形の鏡を6枚組み合わせて合わせ鏡にし、赤、緑、青のLEDの光が反射するような構造にすることで、3つのLEDの光が丸い花のような華やかな模様に見える万華鏡装置。これをつくりながら、万華鏡について調べてみるとおもしろそう!
1 万華鏡とは?
万華鏡は昔からあるおもちゃのひとつ。合わせ鏡による光の無限反射を応用して、ありえない空間をつくり出す装置だ。
2 合わせ鏡の形
例えば2枚の鏡を使ってその見え方を調べてみよう。鏡の合わせ方、角度、大きさなど、いくつかのパターンでどんなふうに見えるか実験してみるとおもしろい。2枚の鏡の開く角度で、映り方も変わる。平行に合わせると無限 の空間が広がるように見えるし、90°なら全反射し、光が戻ってくる。道路や自転車の後方についている反射板はこれを応用したものだ。
また、この中に自分の顔を映すと3つの顔が映るが、正面の顔は左右が逆(正常)に見える。はて?そもそもなぜ鏡は左右反対に見えるのか? 30°だとどうか? 60°だとどうか? 鏡を使うと光を反射して、建物の影になっている部分まで光を届けることができる。これを応用した便利装置が作れないか?
3 中に光を入れるとどうなるか
ランタナカレイドをつくって、どんなふうに見えるか確認しよう。鏡をどんな角度で何枚使うかで、どう見え方が変わるだろうか? LED部分はそのままで、鏡の枚数や合わせ方、形などを工夫してバリエーションをつくるのも面白い。
4 課題
もっといろいろなタイプの万華鏡や、このしくみを応用したおもしろい工作をつくってみたい。特にLEDの光に加え、キラキラしたものを使うなど装飾や光の使い方にも工夫の余地が多くある。また鏡の途中にLEDの光を出すなどにも挑戦してみると、新しい万華鏡の見え方ができるかもしれない。
「RGBビジュアライザー」
赤・緑・青、3色の光を自在にコントロールして、さまざまな色をつくり出す装置。これを使うと、光と色についておもしろい自由研究ができるぞ。
1 光の三原色
白い光は赤・緑・青の3色の光が混ざってできている。太陽光は、分解されると虹色になる(虹が見えるしくみ)。雑誌のカラー印刷はYMCKの4色のインクが使われている。色について、気になることを調べてみよう。
2 RGBビジュアライザーとテレビ画面
RGBビジュアライザーをつくって、さまざまな色の光をつくってみよう。テレビやパソコンのモニターもRGBの3色のLEDで表現されている。どんなしくみで画面にさまざまな映像を映し出しているのだろう?
3 LEDのしくみ
LEDはなんで光るのか? LEDはどうやって開発されたのか? 懐中電灯やデスクライトなどで当たり前に使われている白色のLEDがどうやって実現したのか、調べてみよう。
4 課題
光とはどんなもので、どんな性質があるのか。調べてみるとむずかしく、まだまだ解明されていないこともたくさんある。また、なぜものが見えるのか、目のしくみについてもっと調べてみたい。
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