中生代(約2億5200万年前〜約6600万年前)の哺乳類に関する情報は、21世紀になってからいっきに増えました。
20世紀まで、中生代の哺乳類といえば、恐竜たちの影でひっそりと活動する小型種ばかりとみられていました。見た目はみな、ネズミのような姿をしていたとされ、哺乳類が増え始めるのは中生代が終わり、鳥類を除く恐竜類が絶滅し、新生代が始まってからと考えられていました。
しかし、21世紀になってから、さまざまな哺乳類の化石がみつかっています。その中には、「ヴォラティコテリウム(Volaticotherium)」のように樹木から樹木へと滑空する種類、「フルイタフォッサー(Fruitafossor)」のように地面を掘る種類、「カストロカウダ(Castorocauda)」のように水中を泳ぐ種類、そして、「レペノマムス(Repenomamus)」のように恐竜を襲う大型肉食種などがいました。レペノマムスに関しては、最近になって自分よりも大きな植物食恐竜を襲い、そのまま化石となったという標本も報告されています。
ここで紹介した哺乳類は、実は私たち人類やその仲間たちとはつながっていません。私たち人類は、イヌやネコ、クジラなどの仲間たちとともに「真獣類」というグループに属しています。ヴォラティコテリウム以下の哺乳類は、すべて「真獣類ではない哺乳類」で、そうした哺乳類は中生代末の大量絶滅事件でほとんど姿を消しました。
中生代の真獣類は、まだ発見されている化石の数が少なくて、よくわかっていません。ただし、「ジュラマイア(Juramaia)」や「エオマイア(Eomaia)」といった小型種は報告されており、すでに登場していたことは確かです。
さて、人類は、真獣類の中でも「霊長類」というグループに分類されます。今のところ、2021年にワシントン大学(アメリカ)のグレゴリー・P・ウィルソンさんたちによって報告された「プルガトリウス(Purgatorius)」が“最古の霊長類”です。新生代のはじまりから、わずか11万年後の北アメリカに生息していました。
プルガトリウスは、“最古の霊長類”なのですが、みつかっている化石が部分的すぎて、その姿を含めてわからないことだらけです。
これからの新発見や新研究で、プルガトリウスの新たな化石がみつかり、その姿が明らかになるかもしれません。そして、新生代のはじまりから、わずか11万年後に霊長類がいたのならば、そのわずか数十万年前の中生代に霊長類がいても不思議ではありません。人類の遠い祖先が、恐竜とともに、どのような姿で生きていたのかが、そう遠くない未来に明らかになることでしょう。(文/土屋 健)
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