病気や怪我で臓器が回復できないほど傷ついた場合、これまでは臓器移植を受けなければ治療できませんでた。成熟した大人の細胞は、それぞれの臓器の細胞にしかなることができないため、例えば、皮膚の細胞は皮膚に、筋肉の細胞は筋肉にしかなることはできず、肝臓が損なわれた時に皮膚や筋肉の細胞で肝臓が修復されることはありません。
そこで京都大学の研究グループが大人の細胞をいろんな臓器になる能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)変える方法を開発。臓器移植に頼らず、傷ついた臓器を蘇らせる再生医療が期待されるようになっています。患者から採取した細胞をiPS細胞に変えた上で、患者が求める臓器をつくり、移植することで健康を取り戻す再生医療が目指されていま す。しかし、未だ移植可能な大きな臓器をつくり出すことまでは実現していません。そのため3Dプリンターを使って臓器をつくろうとする研究が進められています。
3Dプリンターは溶かしたプラスチックをノズルから噴き出して希望の立体をつくり出す装置で、プラスチックの代わりにノズルから細胞を噴き出して臓器をつくり出そうとしているのです。
アメリカのウェイクフォレスト大学再生医療研究所の研究グループは、独自に開発した3Dプリンターを用いて、臓器を形作る足場に細胞を植え付けることに成功しています。カラープリンターが異なる色のインクを紙に吹き付けることで鮮やかな画像を印刷するのと同じように、様々な細胞を植え付けることができるようになっており、複数種の細胞でできた腎臓のような複雑な臓器をつくることにも挑戦しています。
多くの患者を救うようになるには効果や安全性を確かめなければならず、実用化にはまだまだ時間がかかりそうですが、早ければ10年以内にバイオ3Dプリンターによる再生医療が実現するのではないかと考えられています。(文/斉藤勝司)
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