協力/九州大学大学院芸術工学研究院 講師 斉藤一哉
ここでは、子供の科学2020年11月号とじ込み付録「ペーパークラフト ハサミムシ」に関連した情報や動画を紹介します。誌面と合わせてお楽しみください。
こちらは、ペーパークラフトの考案者・九州大学の斉藤一哉先生によるつくり方紹介動画。手順を1つずつ、ていねいに紹介してくれるので、誌面の解説と合わせてこの動画を見れば、つくり方がより詳しくわかるぞ。
©九州大学大学院芸術工学研究院 講師 斉藤一哉
ペーパークラフトをつくったら、次はぜひ本物のハサミムシも見てほしい。翅を広げる様子に注目して、ペーパークラフトを動かして比べてみよう。
※この動画はTokyoBugBoysの平井文彦さんに特別にご提供いただきました。
http://tokyobugboys.com/
©TokyoBugBoys 平井文彦
ここからは、ハサミムシの翅のスゴさをより詳しく解説していくぞ。
翅を広げると収納した状態の15~18倍の大きさになるよ。しかも、スゴいのは大きさだけじゃない。ハサミムシにとって、翅は広げたときに、毎秒数十回もの羽ばたきに耐えられる強度が必要なんだけど、この強度を保つヒミツとして、後翅(こうし)に放射状のフレームが備わっているんだ。
片方の翅を広げたコブハサミムシ
後翅(こうし)に備わったフレームは、中心に特殊な「ヒンジ(蝶つがい)」のようなものを備えていて、これによって「扇型の扇子を閉じた状態」から、さらにもう一度真ん中で折りたたむことができるようになっている。また、このヒンジにはゴム状のタンパク質も備わっていて、この弾性を利用することで、翅を一瞬で閉じたり、展開した状態でロックしたりすることができるのだ。
CTスキャンで撮影したハサミムシのフレーム
ハサミムシの翅が持つ工学的特徴を活かせば、人工衛星用の太陽電池パネルや建築物から、傘や扇子などの日用品まで、多くの工業製品に応用できると期待されているよ。
さまざまな形状のハサミムシ型の展開構造例
ここまでに説明したような特徴や、工学的な特性はこれまでにも知られていたんだけど、工業製品に応用するために欠かせない「展開図の設計法」は解明されていなかったんだ。展開図の設計法というのは、サイズや形を変えても工学的な特性を保つことができるような数学的ルール(より詳しくいうと幾何学的ルール)のことだ。そこで、九州大学大学院芸術工学研究院の斉藤一哉先生は、オックスフォード大学自然史博物館(イギリス)の研究者たちと共同で研究を進め、展開図の設計に必要なルールをついに解明した。
ハサミムシの後翅
斉藤先生たちの研究によって明らかになったルールは、とてもシンプルなものだった。基本図形となる点や線、円をもとにして、ルールに従って線を引いたり、回転させたり、鏡に写したときのように反転させたりすると、展開図をつくることができるのだ。定規とコンパスがあればできるので、興味のある子は下のURLで作図法の説明もチェックして、作図にチャレンジしてみよう。ちなみに、この研究には折り紙の研究成果も活かされているぞ。
https://movie-usa.glencoesoftware.com/video/10.1073/pnas.2005769117/video-2
展開図の設計法